研究課題/領域番号 |
23K18063
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤松 史光 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10231812)
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研究分担者 |
澤田 晋也 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (70969683)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | バイオマス / 資源循環システム / アンモニア生産 |
研究実績の概要 |
本研究はアンモニア燃焼から発生する硝酸態窒素を再利用し、環境に優しいエネルギー循環システムを構築することを目的としている。具体的には、硝酸態窒素からアンモニアを再生産する一連のプロセスを開発し、次世代エネルギーの持続可能性を高めることを目指している。 この変換プロセスは三段階に分けられ、第一段階で植物が硝酸態窒素を吸収しタンパク質へ変換、第二段階で微生物などがこのタンパク質をアミノ酸や尿素など、アンモニアに変換しやすい中間物質に変換し、最終段階でこれらをアンモニアに変えて濃縮する。 今年度の実験では、硝酸態窒素を吸収する第一段階の実験において、ウキクサ類に焦点を当てた。ヒメウキクサを使った試験では、硝酸態窒素とアンモニア態窒素の比率を変えた培養により、ウキクサの成長に及ぼす窒素形態の影響を検証した。結果、硝酸態窒素が増えるほど成長が良好であり、ウキクサが窒素循環システムでの有力な植物候補であることが確認された。また、第三段階のアンモニア生産ステップの効率化を目的とした実験では、ナタマメ由来の酵素を用いた尿素からのアンモニアの合成実験を検証したところ10分以内で反応が確認された。さらに土壌や水からアンモニア生産能をもつ可能性のある微生物分離を目指し、現在までにいくつかの土壌から微生物プールを採取した。スクリーニングをすすめることにより効率的なアンモニア生産微生物の特定と培養条件の最適化を進める予定である。今後、各ステップの産物が次のステップにつながるようプロセスを検証し、窒素資源循環システムとして機能することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である本年は、実験に供する材料、特に植物や微生物の取得に時間がかかったことから、実験立ち上げ時期が遅くなった。ただし進めている研究自体に大きな支障はなく、初年度の若干の遅れは2年度以降に回復する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、硝酸態窒素からアンモニアを再生産する一連のプロセスを開発し、次世代エネルギーの持続可能性を高めることを目指している。この変換プロセスは、第一段階で植物が硝酸態窒素を吸収しタンパク質へ変換、第二段階で微生物などがこのタンパク質をアミノ酸や尿素など、アンモニアに変換しやすい中間物質に変換し、最終段階でこれらをアンモニアに変えて濃縮する。 現在までに第一段階として、ウキクサが硝酸態窒素を効率よく吸収して成長することが明らかとなったが、この植物による硝酸態窒素の吸収・還元能力の詳細を検証するため、吸収可能な窒素成分の量とその成長度合いとの相関を明らかにする。また、今回用いている硝酸イオン以外の硝酸態窒素で生育可能かどうか検証する。 また、前年度に引き続き、土壌や水からの微生物のスクリーニングを進め、アンモニア生産能をもつ可能性のある微生物を単離し、その能力を検証する。 さらに、硝酸態窒素をタンパク質に還元する植物の能力と、第三段階のアンモニア生産能のある微生物との橋渡しとして、植物バイオマスを資源として増殖する微生物等の中から、タンパク質からアンモニアの変換の中間産物を生産する微生物を探索する。具体的にはタンパク質からアミノ酸を生産して蓄積する微生物、あるいは尿素などのアミノ酸以外のアンモニア態窒素を蓄積するような微生物を探索し、アンモニア生産の高効率化の要素を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度である本年は、実験に供する材料、特に植物や微生物の取得に時間がかかったことから、実験立ち上げ時期が遅くなった。それに応じて年度内の消耗品費の使用が少なくなり(40万円→約11万円)、実験補助員の雇用ができなかったことから人件費がゼロとなった(12万円→0円)。また、学会への参加も見送ったため、旅費も使用しなかった(15万円→0円)。 植物、および微生物の研究等を立ち上げたため、次年度は研究のスピードを加速することができる。人件費は研究補助員について、1年目と2年目に予定していた時間数を合わせた時間分を雇用する予定である。また消耗品費はアンモニア生産のための酵素実験、および植物および微生物の生育実験で使用予定である。旅費は、国内の農芸化学関係の学会、および植物・微生物等の採取のための交通費として利用予定である。
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