研究課題/領域番号 |
23K18065
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
宮本 英揮 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10423584)
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研究分担者 |
中村 真也 琉球大学, 農学部, 教授 (30336359)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 土壌水分 / センサネットワーク / LTE-M / 三軸加速度 |
研究実績の概要 |
令和5年度は,「自律分散型センサネットワークシステムの開発」を目的として,次の①~③について検討した。 ①多機能地中埋設センサの開発: 乾燥状態を判別するための従来の農業用土壌センサは,雨天時の高水分条件に通用しないうえに,地中の土壌構造に関する情報を測る機能を持たない。そこで,地中の亀裂・選択流の検知のための誘電率および地下水温等の同時計測機能と,土塊の位置・角度の変化を測るための3軸加速度計測機能を備えた高水分用地中埋設センサを,協力企業と共同で開発した。 ② LTE-M型省電力センサネットワークの開発: これまでに代表者・宮本が手掛けた4G・5G用統合型IoTプラットフォームの場合,ゲートウェイ端末(親機)に分散配置した子機による全データを集約してクラウドにアップロードする方式を採用していた。しかし,電波を遮る障害物が多い山林では,通信障害が多発すること,そして電源の確保が難しいこと等を考慮して,電波干渉の影響が小さく,大容量データ通信に適した,LTE-M型の省電力センサネットワークを新たに構築した。 ③ LTE-M型省電力センサネットワークの野外実証試験: 多機能センサを実装したLTE-M型センサネットワークを山林内で試験的に運用し,長期運用する場合の課題,とりわけ,通信・電源に関する課題を抽出し,センサネットワークの機能強化をはかった。その結果,1日に1時間以上の日照がある場所であれば,長期の安定稼働が期待できる技術水準に到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
設定した令和5年度の目標を,年度末までにすべて達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度「異常検知・危険度診断技術の開発」: 自治体・自治会・土地所有者等の協力のもと,土砂災害の発生が危惧される佐賀県の佐賀市X地区,唐津市Y地区,鳥栖市Z地区の斜面に,気象センサ一式および地中埋設センサ(3深度/点)を実装した独立稼働型端末を分散配置し,斜面データの収集に着手する。気象データを含む全点収集データを分析し,データの変化パターンの類型化や異常検知アルゴリズムの開発等に着手する。 令和7年度「アラートシステムの開発・実証」: 新たに収集されるデータを利用して,前年度に構築した異常検知アルゴリズムの精度を評価する。また,センサネットワークを設置した斜面単位(または集落・地域単位)で,がけ崩れの兆候やその危険度等をリアルタイムで閲覧できるWebシステムを構築する。そして,各地区の住民および災害対応機関と共同で,両システムの利用体験の場を設け,より実用的なアラートシステムの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年7月に,独立稼働型端末を配置予定だった市町において,3名が亡くなる大規模な土砂災害が発生した。被災地の事情を総合的に勘案し,端末の一部の製造を,動作検証を行った翌年の令和6年度に繰り下げることとした結果,次年度使用額が発生した。
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