研究課題/領域番号 |
23K18085
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
国枝 哲夫 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (80178011)
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研究分担者 |
陸 拾七 (陸拾七) 岡山理科大学, 獣医学部, 講師 (50812757)
米澤 隆弘 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (90508566)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 在来馬 / 家畜化 / モンゴル |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにモンゴル在来馬に家畜ウマとは種の異なるPrzewalskiウマのY染色体を持つきわめて特異的な個体が存在することを見いだしている。これは、家畜ウマがターパンと呼ばれる単一種に由来するというウマの家畜化に関する従来の定説とは矛盾するものであり、本研究ではモンゴル在来馬の全ゲノムの塩基配列の解析を行い、Y染色体以外にもPrzewalskiウマのゲノムに由来する領域が存在するかを明らかとすることを試みる。 まず、これらの個体を含むモンゴル在来馬集団の個体について次世代シーケンサーを用いて全ゲノムの塩基配列を明らかにした。さらに得られた全ゲノムの塩基配列データについて、家畜ウマおよび絶滅前のPrzewalskiウマおよび再野生化された現生Przewalskiウマの全ゲノム配列との比較を行った。その結果から、このモンゴル在来馬の集団は、少なくても現生Przewalskiウマとの間で遺伝的交流があったことが推測された。 次に種内で高い多様性を示すPRDM9遺伝子に着目し、その配列をPrzewalskiウマのY染色体を持つモンゴル在来馬の集団において調べたところ、少なくとも3ハプロタイプが集団内に存在することが明らかとなった。これらのハプロタイプは家畜馬には一般的に認められるハプロタイプであるが、これまでに報告されている限られた数のPrzewalskiウマには存在しないものであった。 これらの結果は当該モンゴル在来馬の集団とPrzewalskiウマとの関係を推測する上で重要な知見と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいて研究を実施し、今年度はモンゴル在来馬集団の個体について次世代シーケンサーを用いて全ゲノムの塩基配列を明らかにするとともに、種内で高い多様性を示すことが知られているいくつかの遺伝子のうちPRDM9遺伝子に着目し、その配列をPrzewalskiウマのY染色体を持つモンゴル在来馬の集団において調べている。これらのことから、おおむね順調にしていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も引き続き研究実施計画に基づき、得られた全ゲノムの塩基配列データについて、家畜ウマおよびPrzewalskiウマの全ゲノム配列と網羅的に比較することで、Przewalskiウマゲノムの家畜ウマへの移入の時期を推定する。また、PRDM9遺伝子に加えて、MHC遺伝子等の種内で高い多様性を示す遺伝子の配列を家畜ウマとPrzewalskiウマの間で比較し、モンゴル在来馬の特定の集団にPrzewalskiウマ型のハプロタイプが存在するかを明らかにする。毛色などの特定の形質関わる遺伝子についても家畜ウマとPrzewalskiウマの間で比較することで、当該個体の各種形質との関連についても検討する。これらに結果から、家畜ウマに移入しているPrzewalskiウマのゲノム領域を推定し、それらを識別できる一塩基多型(SNPs)を特定する。さらに、これまでの我々の調査から、モンゴル以外においても家畜化当初の祖先型ゲノムの特徴を残している可能性が高いと推測される在来馬集団についても新たなサンプリングを実施し、それらSNPsを用いた解析を行う。以上の過程により家畜ウマ集団のゲノム中に含まれるPrzewalskiウマゲノムの全体像を明らかにし、Przewalskiウマゲノムを含む家畜ウマの由来とユーラシア大陸における伝播の過程についての新たな知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付決定後、モンゴルにおけるウマDNAのサンプリングについてモンゴル側と折衝した結果、気候条件等により年度内の実施が困難であることが判明し、その結果、これらのサンプルを用いた各種解析が困難となった結果、次年度使用額が生じた。 次年度に、サンプリングを実施し、それらのサンプルを用いて、当初予定していたウマの各種形質に関わる遺伝子の塩基配列の解析を行うことを計画している。
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