研究実績の概要 |
本課題では、トランスファーRNA(tRNA)の役割を特徴づける塩基修飾などtRNA分子種の多様性に関する知見を新たに得ることによって、今まさに集積されつつある多様な真核生物の高精度ゲノム情報を活用してtRNA分子種の多様性についての知識を拡大し、究極的に、細胞状態を映す分子としてのtRNAの機能の包括的理解を導くことを目的としている。このために、インシリコ配列解析と分子生物学的解析の大きく分けて2つのアプローチを用いる。初年度は、とくにインシリコ配列解析については順調に進めることができた。とくに、二次構造を考慮したゲノム配列からの候補tRNA領域の網羅的検出のためのプログラムを吟味し、多様な脊椎動物を対象として網羅的検出の試行を施した。結果として、計算時間が現実的でありながら、信頼できる検出結果を出力するプログラムを選定しワークフローを確立することができた。上記試行の対象とした種のうち、真骨魚複数種について、全ゲノムを対象としたtRNAのコピー数と染色体配置の解析を行い、その一部を全ゲノム配列の新規取得を報告する原著論文(Sato et al., DNA Res, 2024)に含める形で出版した。そこからは、全ゲノム情報の完成度に応じて、検出されるtRNAコピー総数が大きく変動しうること、そして、ゲノムサイズが大きいほど、tRNAコピー総数が多くなる傾向がある可能性が示唆された。今後より多くの生物種でこの可能性を検証する必要がある。
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