研究課題
真核生物における染色体分配は、細胞分裂期に両極から伸びてきた紡錘体微小管が染色体のセントロメア領域を捉え、牽引することによって遂行される。セントロメアを中心とする染色体分配機構は、多くの生物種で保存されていると考えられてきた。しかしながら、多様な生物種のゲノム配列が明らかになると、セントロメアの構成は、予想以上に生物種間で多様化していることがわかってきた。一方、染色体を牽引する紡錘体微小管タンパク質の配列は、極めて保存されており、多様化したセントロメアがどのようにして保存された紡錘体微小管と結合し、染色体分配を達成させるのかという点は、大きな謎である。そこで、本研究では、脊椎動物の主要なセントロメア構成因子を欠損している生物 (毛カビや細胞性粘菌を対象) が、どのようなセントロメア構成をしており、どのように紡錘体微小管と結合し、染色体分配を達成させるのかを明らかにすることを目的とする。毛カビに関しては、CENP-TやCENP-Wを組み換えタンパク質として精製し、その再構成複合体がDNAと結合することを示せた。また、CENP-TやDsn1にタグを付加したタンパク質を発現する毛カビを樹立して、タグ抗体による免疫沈降と質量分析実験によって、毛カビ特異的動原体タンパク質を2種類同定した。実際にそれらのタンパク質をGFP融合タンパク質として毛カビ細胞中で発現させ、CENP-Tと共局在することを確認した。粘菌に関しては、タグを付加したCENP-Aを粘菌細胞内で発現させ、細胞内の免疫沈降実験でCENP-AとSpc24/25が結合する可能性が示された。また、CENP-AのN末端領域を欠失させた変異体では結合は確認できなかった。今後の実験により、これまでのモデル生物の動原体/セントロメアとは異なる構造を明らかにしていきたい。
2: おおむね順調に進展している
毛カビ、粘菌の研究とも新事実がいくつか発見できており、研究は順調に進展していると判断できる。
最初に立てた計画に従って、予定通りに研究を推進してゆく。
消耗品などを効率よく使用打きたため、一部の使用を次年度に持ち越しているが、すでに使用用途も決まっており、次年度は予定通りに執行できる見込みである。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/research_results/papers/detail/1063
https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/news/detail/782