研究課題/領域番号 |
23K18116
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坂内 博子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
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研究分担者 |
添田 義行 学習院大学, 理学部, 助教 (10553836)
前田 純宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70443025)
吉村 英哲 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90464205)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | タウ / タウオパチー / iPS細胞 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病、ピック病、慢性外傷性脳症など「タウオパチー」と総称される多様な疾患を引き起こすのは、微小管結合タンパク質のタウの異常な凝集である。タウオパチー脳の神経細胞・グリア細胞内に形成されるタウ線維の微細構造は疾患ごとに特異的であり、疾患特異的なタウ線維の構造を決定するのは凝集核の構造であることが報告されている。従って、タウオパチー発生の瞬間ともいえる凝集核形成の実態とメカニズムを知ることは大変重要と考えられる。In vitro実験ではタウが液液相分離(LLPS)を介して凝集核を作ることが示されている。しかし、実際の細胞の中でいつ、どのように、タウの凝集核が形成されるのか?についてはこれまで明らかになっていない。本研究の目的は、細胞内でタウがモノマーからオリゴマー、オリゴマーから凝集核となる場と環境を特定し、タウオパチー発症の基本原理を明らかにすることである。本研究では青色光依存的にタウのダイナミクスを操作するツールOptoTauと1分子イメージング法を用いて、「細胞内でタウ凝集核を形成する必要条件は何か?」を明らかにすることを目指した。青色光の時間パターンを変化させることにより、凝集タンパク質を封入するアグリソーム形成と安定なタウオリゴマー形成を選択的に生成する条件を見出した。その中でも、タンパク質分解を免れて安定した凝集を短時間で形成する条件を発見したことが大きな進展であった。タウシード依存的にiPS細胞内のタウを凝集させる条件を確立した。免疫蛍光染色法の固定法や抗体を工夫することにより、タウの凝集体の凝集形態を厳密に特定する方法ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様なタウ凝集体の特異的な形を、OptoTauにより特異的に誘導する条件が定まり、タウの凝集形態を細胞内で特定する技術が確立されたため。光遺伝学的手法を用いる際の予想外の問題点が発見され、それが克服できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は特定形態のタウ凝集を誘導した細胞において、1分子計測を行う。特に、LLPS液滴が安定したタウ凝集の形成に必要なのか?という問いに答えるために、 LLPS液滴中にオリゴマー形成されるかを調べる。 また、初代培養神経細胞・iPS細胞にOptoTauを導入して、タウ凝集形態の制御を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定に反し、神経細胞にタウ凝集ツールを導入することが困難でその条件検討により多くの時間を要した。それにより、今年度に神経細胞での動態解析に使う予算が費消できなかった。
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