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2023 年度 実施状況報告書

ヒト初期発生過程の再構成実験系の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K18130
研究機関奈良県立医科大学

研究代表者

堀江 恭二  奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30333446)

研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
キーワードiPS細胞 / 胚盤胞 / Blastoid / 遺伝子発現 / RNA-seq / 初期発生
研究実績の概要

受精卵からの胚盤胞(Blastocyst)の形成、着床、器官原基の形成に至る初期発生過程は、先天性疾患や不妊の病態を理解する上で重要である。しかし、ヒトにおいては、受精卵を初期発生の研究に用いることは、倫理的観点から極めて困難であり、この状況を打開する実験手法が求められている。我々は、独自に開発した遺伝子破壊法を用いて、初期発生に関わる多数の遺伝子の機能をスクリーニングする過程で、ヒトiPS細胞において、ある遺伝子の機能を抑制した際に、Blastocystに極めて類似した構造体(Blastoid)が出現することを経験した。この知見は、dish上でヒトの初期発生過程を模倣できる可能性を意味する。そこで、本研究では、本遺伝子の機能を解析し、さらに本遺伝子が関わるpathwayを制御することで、効率的にBlastoidを作製する実験系を構築することを目指している。
まず、本遺伝子の機能を抑制した際に、ヒトiPS細胞に対してどのような影響が出るかを知ることが必要と考え、遺伝子機能を抑制した細胞と抑制しない細胞について、RNA-seqにより全遺伝子の発現レベルを比較した。その結果、本遺伝子の抑制により、Blastocystの構成要素である栄養外胚葉や原始内胚葉で発現している遺伝子が、弱いながらも上昇傾向にあることがわかった。この知見をさらに調べるために、1細胞レベルでのRNA-seqを行ったところ、上記の栄養外胚葉や原始内胚葉に特徴的な遺伝子が、ヒトiPS細胞の中の一部の細胞集団において上昇していることがわかった。これより、本遺伝子の抑制により、ヒトiPS細胞がBlastoidを形成しやすい遺伝子発現状態に推移している可能性が推測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

RNA-seq解析により、本遺伝子の抑制によって、本来、栄養外胚葉や原始内胚葉で発現している遺伝子が、iPS細胞で上昇傾向にあることがわかったが、このことは当初は予想しておらず、解釈に時間を要した。この点についてさらに検討するために、1細胞レベルでのRNA-seqが必要となり、実験と解析に時間を要することになった。

今後の研究の推進方策

1細胞RNA-seqにより、ヒトiPS細胞の中にBlastocystの構成要素に近い細胞が出現することがわかり、本遺伝子の抑制がBlastoid形成効率を高める可能性が示唆された。しかし、現在の我々の実験条件では、Blastoidの形成効率が安定しておらず、本遺伝子の発現抑制がBlastoidの出現効率に影響するか否かの定量的な判定には至っていない。Blastoid形成効率は、ヒトiPS細胞の株間でも異なることが報告されているので、本実験で使用している株における適切な実験条件の設定が必要である。

次年度使用額が生じた理由

RNA-seqの結果が当初予想とは異なっていたため、RNA-seqの情報解析を長期に渡って深く行うことになり、実験試薬への予算執行が当初計画よりも少なくなった。次年度は、RNA-seqの結果に基づいてBlastoid作製に関する培養実験が増加するため、当初計画の予算執行がなされる予定である。

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公開日: 2024-12-25  

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