研究課題
複数の繊毛の運動協調現象はメタクローナル波などがよく知られるが、そのメカニズムは解明されていない。かつては周囲の液体による粘性抵抗が重要な役割を果たしているという説が有力だったが、近年細胞内の構造が寄与している可能性が指摘されている。繊毛研究のモデル生物であるクラミドモナスは通常2本の繊毛を同じタイミングで打つ。これも粘性抵抗によるという説が有力だったが、最近我々は2本の繊毛の打つタイミングがずれる変異株を単離した。この変異株の存在そのものが粘性抵抗説を否定し、特定のタンパク質が2本の繊毛の同期に必要であることを示唆する。本研究は、これらの繊毛運動非同期変異株群の原因遺伝子産物の機能を明らかにすることによって、2本の繊毛が協調して運動するための分子機構を明らかにすることを目的とする。2023年度は、2本の繊毛の同調に重要な役割を果たすと考えられるタンパク質の局在観察を行った。既に繊毛に存在しないことはわかっていたため、細胞体内のより詳細な観察を行ったが、おそらく発現量がかなり少ないために、細胞体内での局在を絞り込むことができなかった。一方で、別のプロジェクトで作成した変異株が、意外なことに2本の繊毛の同調に寄与するという結果を得た。これは繊毛内タンパク質であり、繊毛運動に関わるタンパク質の中に、2本の繊毛の運動性を調節する役割を果たすものがあることを示唆し、興味深い。
2: おおむね順調に進展している
解析の鍵となるタンパク質の機能解析がやや遅れているものの、新たに繊毛同調に寄与するタンパク質を同定することができ、総じて順調であると言える。
シャペロニンタンパク質および新たに同定したタンパク質の機能解析に力を入れると同時に、解析途中の「繊毛運動同調不全株」の遺伝子解析を行う。
予定していたタンパク質のproximity assayを行う準備が整わなかったために、予定していた実験を2024年度に持ち越すこととなったため。2024年度前半までにこの準備を整えて実行する予定である。
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