研究課題
パルミチン酸やステアリン酸のような飽和脂肪酸を含むリン脂質が生体膜に蓄積すると、蛋白質分解反応(UPR)や細胞死を引き起こす可能性がある。最近、アディポネクチンの細胞内受容体と推定されるAdipoR2が、特に細胞に飽和脂肪酸が過剰に負荷された場合に、膜リン脂質組成を変化させることで膜の流動性に寄与することが示唆された。しかしながら、その根底にある分子メカニズムは未だ解明されていない。今回我々は、AdipoR2が飽和脂肪酸を含むリン脂質に選択的なホスホリパーゼA2活性を持つことを明らかにした。HEK293細胞でAdipoR2を過剰発現させると、飽和脂肪酸を含むリン脂質が減少し、sn-1位に脂肪酸を持つリゾリン脂質が顕著に増加した。対照的に、HEK293A細胞でAdipoR2をノックダウンすると飽和リン脂質が増加した。組み換えAdipoR2タンパク質はin vitroで顕著なPLA2活性を示し、sn-2位の飽和脂肪酸を選択的に除去した。HeLa細胞でAdipoR2を過剰発現させると、活性依存的にパルミチン酸誘導性の細胞死とUPR活性化が顕著に抑制された。これらの結果を総合すると、AdipoR2は飽和脂肪酸選択的ホスホリパーゼA2活性を発揮することにより、飽和脂肪酸による脂質毒性から保護することが示唆される。
1: 当初の計画以上に進展している
酵素活性の発見から60年以上、酵素本体が未同定であったリン脂質李モデリング酵素がAdipoR2であることを証明することができた。
AdipoR2以外にPAQRファミリーには11の分子が存在する。今後、これら11種類のPAQR分子に関してのリン脂質リモデリングPLA2としての機能を明らかにする必要がある。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Journal of Biological Chemistry
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