研究課題/領域番号 |
23K18201
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 利憲 広島大学, 両生類研究センター, 教授 (60580925)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | イベリアトゲイモリ / P53 / 腫瘍 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
腫瘍またはそれが悪性化した「がん」がどのような機序で生じるのか?という問いは、生命科学や基礎医学にとって極めて重要な主題である。しかしながら、一般にはそれらは遺伝子の変異が細胞に蓄積した結果生じた病変であると捉えられる。あくまでも異常な状態であり、どの遺伝子がいつ、どのように変異するのかという偶然の要素が研究を困難にする。よって、腫瘍やがんの発生機序の解明には、できる限り偶然性を排し、繰り返しの検証ができる実験モデルが必要である。がんは脊椎動物に頻繁に見られるが、両生類に属するイモリ類はがんにならないと言われてきた。しかし申請者はイモリのP53遺伝子に変異を導入すると、皮膚、結合組織、および膀胱に腫瘍が発生することを見出した。そこで本研究では、P53改編イモリを利用して、皮膚の腫瘍発生研究のモデルを確立することを目指した研究を行った。初年度は、複数の変異パターンを持つP53改編イモリの親個体を用いた掛け合わせ実験を行い、どのような遺伝子型の組み合わせにより腫瘍が発生するのかを解析する準備を整えた。また、P53の変異を、gain-of-functionの方向から解析するために、変異型P53強制発現ベクターを構築して、マイクロインジェクションを行い、遺伝子導入イモリを作製した。さらに、次世代シークエンサーを利用した遺伝子発現量の解析において、より精度の高い結果を得るための遺伝子リファレンスを構築するためのシークエンスデータの取得を行うことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
P53改編イモリを利用した皮膚腫瘍発生機構解析モデルの構築に向けて、腫瘍がより高い効率で発生する変異型を調べ、それを系統化するための交配実験を行うことができた。また、改編型P53を強制発現するベクターを導入したイモリを作製することもできた。これらに関しては順調であるが、腫瘍部位で発現する遺伝子の網羅的解析までを行うことができなかったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、引き続き皮膚腫瘍発生機構解析モデルの構築に向けて、腫瘍の発生効率が高い系統を作成するための交配を行う。また、改編型P53を強制発現するイモリに腫瘍が発生するか否かに着目した皮膚組織の解析を行う。さらに、腫瘍部位で発現する遺伝子の網羅的解析を実施し、特異的に発現する遺伝子を同定する。この特異的遺伝子のプロモーターの制御下で蛍光タンパク質を発現する腫瘍可視化イモリを作製する。
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