研究課題/領域番号 |
23K18208
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 智 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50271896)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ヒト・マウスキメラ / 経胎盤移植 / 異種間移植 / 免疫寛容 / 臓器形成 |
研究実績の概要 |
申請者らが開発した経胎盤移植により、ヒトの機能的細胞を有するヒトーマウス異種間キメラマウスの作製を行った。モデル系として、膵臓を欠損するPdx1 KOマウスに、ヒトiPS細胞から試験管内分化系を用いて誘導した、ヒト膵臓前駆細胞を経胎盤的に移植したところ、生後1日程度で死亡するPdx1 KOマウスを生後10日まで生存させることが可能であった。これらのマウスは出生直後は正常の血糖値を示したが、その後急速に高血糖を示して死亡した。それらの個体を解析したところ、膵臓自体は再形成されていなかったが、十二指腸にヒト細胞が確認され、ヒトインスリンの遺伝子およびタンパク質を確認することができた。これらの結果から、移植したヒトiPS細胞由来の膵臓前駆細胞からインスリンを産生するβ細胞が形成され、一時的に血糖値をコントロールすることができたため、生存期間が延長したものと考えられる。以上の結果は、免疫系が完成していない胎児に経胎盤で細胞を移植することにより、種間のバリアを超えて、ヒトーマウス異種間キメラマウスが作製できることを部分的に証明できたものと考えられる。これらの結果をまとめて、現在論文を投稿中である。一方で、Pdx1 KOマウスを用いた実験では、成体まで生存できるマウスを得ることができなかったため、レシーピエントの遺伝欠損マウスを膵臓内分泌細胞のみができない遺伝子改変マウスに変えて、ヒト細胞移植により生存可能となるヒトーマウス異種間キメラマウスの作製を引き続き検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りヒトーマウス異種間キメラマウスを作製することができ、ヒトインスリンを産生する機能的な細胞の存在を確認できた。引き続き生存可能なヒトーマウス異種間キメラマウスの作製を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
Pdx1 KOマウスでは、ヒト膵臓前駆細胞を経胎盤的に導入しても膵臓は再形成されないことが明らかとなった。おそらく膵臓を再形成させるためには、より発生の早い時期にヒト細胞を導入する必要があるものと考えられる。そこで、膵臓自体は形成されるが内分泌細胞のみが欠損する遺伝子改変マウスを用いて、生存可能なヒトーマウス異種間キメラマウスの作製を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの飼育数が予定より少なくなったための差額が生じた。
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