研究課題
自己免疫性脳炎は、自己抗体の直接作用により記憶障害、けいれん、精神症状、自律神経症状など多様な症状を示す脳疾患である。最近、私共を含めた研究により、患者血清中に様々なシナプスタンパク質(GABAa受容体、LGI1、AMPA受容体など)を標的とする自己抗体が見出され、自己免疫性脳炎の診断精度が格段に向上した。一方、血清中の自己抗体は多クローン性で、特異性、量に制約があり、自己抗体が惹起する病態の解明は難航している。最近、患者B細胞から単離された組換え型自己抗体のマウス脳室内注入が行われ始めたが、臨床症状の再現には至っていない。本研究では、自己免疫性脳炎患者から単離した組換え型単クローン性自己抗体を改変し、機能阻害、及び機能解析プローブとして活用して、新しい脳病態解析手法を確立することを目指す。2023年度は、自己免疫性辺縁系脳炎の病態モデルマウスの作製を進めた。また、ドイツDZNEのPruss博士等との共同研究を進め、組換え型LGI1自己抗体の分子病態の一端を明らかにした。具体的には、マウス由来の海馬培養細胞に患者由来のLGI1自己抗体クローンを投与したところ、LGI1を含むシナプスタンパク質複合体の発現レベルや構成成分が大きく変容することを見出した。また、これら自己免疫性脳炎患者由来の自己抗体クローンをマウス脳室内に投与することで、マウスの行動変容や、海馬CA3野における神経細胞の発火活動に対する効果を明らかにした(Upadhyaら投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
自己免疫性脳炎の病態モデルとなるマウスの作製を順調に進めた。また、組換え型LGI1自己抗体の分子病態の一端を明らかにした。
今年度(2023年度)作製したマウスモデルの性状解析を進め、自己免疫性脳炎の病態モデルマウスとして活用可能かを検討する。
次年度使用額が生じた理由:準備済みの研究リソースを用いて効率よく実験をおこなえたことにより、予定していた物品費の執行が減少した。使用計画:2023年度に得た病態モデルマウスの飼育費、およびその性状解析に必要となる物品費(生化学的実験試薬、神経細胞培養試薬、イメージング試薬等)として、計画的に執行する。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Cell Reports
巻: 43 ページ: 113634~113634
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巻: - ページ: in press
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