研究課題/領域番号 |
23K18230
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
林原 絵美子 国立感染症研究所, 細菌第二部, 室長 (20349822)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | Phosphorothioate化修飾 / Helicobacter cinaedi / DNA修飾 |
研究実績の概要 |
細菌にはメチル化以外に第二のDNA修飾としてPhosphorothioate化修飾(PT化修飾)が存在する。PT化修飾はdnd遺伝子群が担っており、メチル化修飾同様、標的配列を認識しPT化修飾する。メチル化修飾と同様に自己DNAを防御する役割が示唆されているが、興味深いことにPT化修飾ではメチル化修飾とは異なり、標的配列のうち完全に修飾されているのは10%程度であり、不均一なDNA修飾が細菌にとってどのような役割をもつのかは不明な点が多く未開拓な分野である。我々はこれまでにH. cinaediの新規Autotransporter proteinが接着因子として機能していることを明らかにするなど、H. cinaedi感染による病態発現に寄与する因子の解析を進めてきた。さらに近年H. cinaediの一部のクローンが保有するPT化修飾が宿主適応に関連する因子の発現を調節している可能性を見出した。そこで本研究ではH. cinaediのPT化修飾に着目し、PT化修飾が宿主での感染成立への寄与をin vivoおよびin vitroで明らかにすることを目的とする. 本年度はdnd遺伝子群の欠損株を用いたTHP-1細胞およびCaco-2細胞への感染実験を行い、dnd遺伝子群欠損による細胞傷害性、細胞接着能、侵入能の変化を評価した。また、dnd遺伝子群の相補株の作製を開始した。また、dndB遺伝子群の発現を負に調節していると考えられているdndB遺伝子の欠損株を作製し、PacBioによりPT化修飾がどのように変化するか解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた細胞感染実験を行った結果、PT化修飾がH. cinaediが感染成立に寄与している可能性を示唆する結果が得られた。そこで相補株を用いた検討を行ってから他の予定していた検討を行うこととし、一部の実験を次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、PT化により発現変化を起こす遺伝子について欠損株を作製し細胞接着、細胞侵入、細胞障害性の変化を評価する。またPT化標的配列を同義置換により非PT化標的配列にした株を作成し,dnd遺伝子欠損による発現変動を評価することによりPT化標的配列の有無による遺伝子発現変動への寄与を評価する。さらにdnd遺伝子欠損株を用いたマウス感染実験により、欠損が宿主定着に与える影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験を次年度に行うこととしたため。また、年度末納品等にかかる支払いは令和6年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定である。
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