研究課題/領域番号 |
23K18240
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
二村 圭祐 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00462713)
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研究分担者 |
波多野 浩士 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60762234)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 多因子間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者が開発したInteraction Between Molecules(IBM)seq法を用いて腫瘍微小環境における細胞間・細胞内で生じる多因子間相互作用をネットワーク構造として解析する方法を確立する。腫瘍微小環境は癌細胞、免疫細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞などの多様な細胞によって構築される。患者の腫瘍組織において、細胞間で生じる受容体とリガンド間の相互作用、各細胞内でのシグナル伝達経路に関わるタンパク質間の相互作用は腫瘍免疫や腫瘍の進展を理解する上で重要である。腫瘍微小環境を解析する手法として、空間的トランスクリプトーム、多重免疫染色による顕微鏡観察が用いられている。しかし、いずれの方法も多因子間にわたる複雑な分子間相互作用を直接解析することはできない。本研究は、微量な腫瘍組織を用いて、腫瘍微小環境における多因子間相互作用をネットワーク構造として定量的かつ空間的に分解して検出することに挑戦する。そのため、本研究において腫瘍組織での複雑な多因子間相互作用を解析する方法を確立すれば、腫瘍微小環境を評価する革新的な手法となる。昨年度は、B細胞をモデルにIBMseq法の改良を進めた。IBMseq法に用いるプライマー配列や修飾の最適化を行った。またPCR条件についても最適化を図った。さらに、DNAバーコード付加抗体を用いた免疫染色法についても様々な条件を検討し、DNAバーコードを付加していない抗体と同様の染色結果が得られる条件を同定した。その結果、実際の分子量を反映する条件の候補を見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微量な検体から細胞間・細胞内で生じる多因子間相互作用をネットワーク構造として解析する方法としてIBMseq法の開発を進めている。昨年度の研究で、IBMseq法の条件の最適化を行った。その結果、実際の分子量を反映する条件の候補を見つけることができた。また、腎癌検体の収集も進め20例ほどの検体を保管することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した腎癌検体を用いて、IBMseqを実施するための条件検討を行っていく。まず、腎癌検体に用いる抗体にDNAバーコードを付加し、未付加の抗体と同様の染色像が得られる条件を設定する。その後、同一ブロックの複数箇所を用いてIBMseqを行い、同様の結果が得られるか検証する。次に、複数の抗体を用いてIBMseqを行い、同一ブロックの複数箇所で同様の結果が得られるか検証する。これにより、臨床検体においても再現性を持って相互作用情報を検出できるか検証する。また、B細胞のシークエンシングデータを用いて、解析のパイプラインをさらに改善し、B細胞におけるIBMseqデータの解析を進め、論文として発表できるように研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度において検体を用いて抗体の検定を行う予定であったが、B細胞を用いたIBMseq法の検証実験で、実験系の改良を行う必要があることを見出した。そのため、昨年度は実験系の改善を図るための条件検討を中心的に進めた。そのため、検体を用いた抗体の検定実験の実施が遅延した。本年度において、これらの検体を用いた抗体の検定実験を実施する。またそのための人件費として使用する予定である。
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