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2023 年度 実施状況報告書

がんセノリティクス治療の局所制御と非侵襲的イメージングによる高精度化に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K18259
研究機関北海道大学

研究代表者

安井 博宣  北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)

研究分担者 稲波 修  北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)
平田 健司  北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431365)
久下 裕司  北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2026-03-31
キーワードセノリティクス / 腫瘍 / イメージング / ラジオミクス
研究実績の概要

本課題では、「核医学画像技術を基盤とした老化細胞の非侵襲的解析法を開発し、老化誘導率の早期の判定と効果予測により、セノリティック薬をもちいた安全で高精度なセノリティクス治療を樹立することが可能か?」という学術的問いに対して、近年着目されている老化細胞除去(セノリティクス)治療を組み合わせた新しいがん治療法が適用可能な症例、患者を選択するために、核医学画像技術を駆使した非侵襲的老化細胞検出法を開発することを目的とする。
初年度では、(1)老化誘導とセノリティック薬を組み合わせた新規がん治療技術の開発について検討した。
老化誘導刺激として放射線照射を選択し、マウス扁平上皮癌SCCVIIおよびマウス乳がんMBT-2細胞に対して照射を行ったところ、5 Gy、10 Gyともに経時的に老化細胞の割合が増加した。次に、セノリティック薬として、抗腫瘍免疫に関連するcGAS-STING経路に対して阻害効果を示す薬剤(未発表につき非公開)を処理したところ、放射線増感効果及び高濃度で細胞老化誘導の抑制が観察された。一方で、これまで報告のあるBcl阻害剤ABT-263とは異なり、cGAS-STING阻害剤が、放射線によって誘導された老化細胞をアポトーシスに変換しているような結果は得られず、既知のメカニズムとは異なる機構で細胞老化が抑制されていることが明らかとなった。以上のことより、放射線とcGAS-STING阻害の組み合わせが新しいセノリティック治療の候補となりうることを明らかにできた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題の具体的な目標は、腫瘍特異的なセノリティクス治療法の開発、DNA損傷・修復を標的とした新規老化プローブの開発、ならびに既存の核医学プローブ画像のラジオミクス解析による老化領域検出法の解析である。初年度において、cGAS-STING経路の阻害と放射線を組み合わせることがこれまで報告のないセノリティクス治療の可能性を示したことから、次年度以降のプローブ開発の実験系を構築した意味でおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

2年目の方策としては、引き続き、(1)老化誘導とセノリティック薬を組み合わせた新規がん治療技術の開発に関して、放射線照射によって起こる腫瘍内の老化細胞をセノリティック薬で除去することで、担がんマウスにおいて抗腫瘍効果が増強されるか判定する。また老化誘導および除去の程度は老化関連ガラクトシダーゼ活性を指標としたSA-β-Gal染色で、SASPは各種サイトカインに対するELISAにより評価する。また腫瘍内老化細胞をSA-β-gal染色により描出し、老化誘導の起点となる因子のスクリーニングを行う。

次年度使用額が生じた理由

効率的に老化を誘導でき、老化除去できる条件および薬剤を検討するのに時間がかかったため、当初の計画にあった放射性プローブの合成まで取り掛かることができなかった。次年度では、動物モデルにおいて老化誘導後のプローブ標的因子の同定と合成を開始するため、翌年分と合わせて助成金を執行する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] In vivo imaging of acute physiological responses after treatment of cancer with near-infrared photoimmunotherapy2023

    • 著者名/発表者名
      Nakajima Kohei、Sugikawa Akiyo、Yasui Hironobu、Higashikawa Kei、Suzuki Chie、Natsume Takahiro、Suzuki Motofumi、Takakura Hideo、Tomita Mayu、Takahashi Sachi、Hirata Kenji、Magata Yasuhiro、Kuge Yuji、Ogawa Mikako
    • 雑誌名

      Molecular Imaging and Biology

      巻: 25 ページ: 648~658

    • DOI

      10.1007/s11307-023-01822-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Electron Paramagnetic Resonance Implemented with Multiple Harmonic Detections Successfully Maps Extracellular pH In Vivo2023

    • 著者名/発表者名
      Nakaoka Ririko、Kato Kazuhiro、Yamamoto Kumiko、Yasui Hironobu、Matsumoto Shingo、Kirilyuk Igor A.、Khramtsov Valery V.、Inanami Osamu、Hirata Hiroshi
    • 雑誌名

      Analytical Chemistry

      巻: 95 ページ: 3940~3950

    • DOI

      10.1021/acs.analchem.2c03194

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] イメージングを基盤とする放射線治療の効率化に向けた開発研究2023

    • 著者名/発表者名
      安井博宣
    • 学会等名
      第26回癌治療増感研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] がん特異的代謝と放射線感受性2023

    • 著者名/発表者名
      安井博宣
    • 学会等名
      第14回放射線生物学セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] マウス扁平上皮がん細胞SCCVIIにおける、Pluronic L64 で修飾したC60 フラーレン(C60/L64)の放射線増感効果2023

    • 著者名/発表者名
      臼田史仁,加藤千博,安井博宣,王鈺博,山本拓矢,稲波修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第66回大会
  • [学会発表] 腫瘍内におけるDNA 量の不均一性が放射線分割照射後の放射線抵抗性がん細胞の出現につながる2023

    • 著者名/発表者名
      山下晃矢,安井博宣,房知輝,藤本政毅,稲波修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第66回大会
  • [学会発表] マウス扁平上皮癌におけるジクロロ酢酸を放出する自己組織化ナノ粒子の放射線増感作用について2023

    • 著者名/発表者名
      山田さと,安井博宣,長崎幸夫,稲波修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第66回大会
  • [学会発表] 18F-FDG PET/MRI によるマウス網膜変性疾患モデルの評価2023

    • 著者名/発表者名
      松元慎吾,須藤志保,安井博宣,水野雄貴,久下裕司,山田健一,平田拓
    • 学会等名
      第17 回日本分子イメージング学会総会・学術集会

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公開日: 2024-12-25  

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