研究課題/領域番号 |
23K18260
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 正志 東北大学, 医学系研究科, 教授 (70302148)
|
研究分担者 |
割田 仁 東北大学, 大学病院, 助教 (30400245)
鈴木 直輝 東北大学, 大学病院, 助教 (70451599)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 封入体筋炎 |
研究実績の概要 |
封入体筋炎 (sIBM)は中高年の慢性進行性の難治性筋疾患であり社会の高齢化に伴い増加している。骨格筋の細胞質に封入体が形成されRNA結合蛋白であるTDP-43が異常蓄積し最終的に筋変性に繋がる。我々はsIBM患者由来筋芽細胞を樹立し、独自に開発したヒト骨格筋電気収縮培養系を活用しメカニカルストレス負荷後の筋管細胞モデルにおけるTDP-43の細胞質内局在異常を再確認した。その分子病態としてはsIBMの骨格筋細胞ではRNA代謝制御を担うTDP-43の局在異常が生じることによりスプライシング制御が不能となり、通常は発現することのないcryptic exonが出現し、蛋白分解系が破綻、封入体が形成されると考えた。この仮説を検証するためメカニカルストレス負荷後のsIBM患者由来筋管細胞での機能喪失につながるcryptic exon発現をRNAシーケンス・スプライシング解析で評価することとした。電気収縮培養後の解析では9つの有意に発現が変化している遺伝子を見出すことができた。今後、機能解析を行い、cryptic exonが出現する生物学的な意味を検討していく。また、sIBMの筋芽細胞を特徴づける遺伝子発現などについては十分に明らかにできていなかったため、RNAシークエンスによる発現解析を行った。ヒトsIBMの骨格筋で見られる封入体にも検出されるApoEなどの転写産物の発現量がsIBM由来の筋芽細胞・筋管で上昇していることが明らかとなり、cell autonomousな機序が働いていることが想定された。蛋白レベルでも発現上昇を確認しており、論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の軸となるcryptic exonの同定を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
Cryptic exon発現蛋白の機能低下の影響をノックダウン実験や個体レベルで解析する。さらにはsIBM生検筋のsingle-nuclei RNAシーケンスによりスプライシングを筋細胞自らが制御するのかを検討する。スプライシング異常制御の観点でsIBMの異常蛋白蓄積の分子機構の全容解明と治療開発を目指していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seqの解析が年度内に間に合わず、次年度に持ち越しとなったため。
|