研究実績の概要 |
超低周波変動する日本の地磁気よりも微弱な10μTの超微弱磁場(extremely low-frequency electromagnetic field, ELF-EMF)が、培養細胞に対してミトコンドリア電子伝達系複合体II活性を低下させることによりマイトファジーならびにミトコンドリア新生を誘導しミトコンドリアを活性化することを代表者らは2022年に報告した(Toda T et al. Commun Biol 5:453, 2022)。本研究の目的は、ELF-EMFの量子生物学的作用機構を明らかにするとともに、うつ病モデルマウスに対する効果を検証することである。同時に、ELF-EMFのヒト疾患への展開を視野に入れる。 AML12細胞とHEK293細胞に対する3 時間のELF-EMF曝露によりHSP70と HSP90 のタンパク質発現レベルは低下するも、両分子のアセチル化が亢進し、その後、HSP70/HSP90と HOP/STIP1の結合親和性が亢進することを明らかにした(Huang Z et al. Ecotoxicol Environ Saf 264:115482, 2023)。 ELF-EMF 3 時間曝露により、培養細胞のATP レベルと最大ミトコンドリア酸素消費量が増加するとともに、タンパク質凝集体が減少し細胞生存率が増加した。したがって、ELF-EMFはHSP のアセチル化を活性化してタンパク質のフォールディングを促進することを明らかにした。 加えて名古屋大学精神科学教室と共同で4名のうつ病患者に対するオープンラベル試験を行いELF-EMFが顕著な抗うつ作用を有することを明らかにした(Tachibana M et al. Asian J Psychiatr in press)。
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