研究課題/領域番号 |
23K18275
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 理器 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00378754)
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研究分担者 |
篠山 隆司 神戸大学, 医学研究科, 教授 (10379399)
菊池 隆幸 京都大学, 医学研究科, 講師 (40625084)
小林 勝哉 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (70737121)
十河 正弥 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90704784)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | E/Iバランス / てんかん / 皮質皮質間誘発電位 / 皮質脳波 / ガンマ活動 |
研究実績の概要 |
脳内の興奮と抑制のバランス(E/Iバランス)の崩れは、てんかん、統合失調症、自閉症など様々な精神神経疾患の原因と考えられているが、患者脳での生理的な評価指標は確立されていない。頭蓋内電極を慢性留置するてんかん外科の術前評価では脳波を直接脳表から計測するため、神経細胞の活動電位を反映する微小な高ガンマ活動が記録できる。電気刺激の入力に対する大脳皮質の興奮・抑制を皮質律動から算出し、安静時脳波のE/Iバランス指標の候補との相関解析から最適の安静時脳波の指標を同定を試みる。侵襲的脳波計測の知見を非侵襲の頭皮上脳波に還元することで、安静時脳波E/Iバランス指標の開発を目指す。 以下の3つの研究項目を推進した。 研究項目1.てんかん性放電との比較検討による刺激誘発性E/Iバランス生理指標の検証 研究項目2.刺激誘発性E/Iバランス生理指標に基づく安静時脳波のE/Iバランス指標の同定 研究項目3.安静時脳波E/Iバランス生理指標を用いたてんかん病態・加齢に関わるE/Iバランス変容の萌芽的探索 研究項目1&2について、刺激直下の刺激誘発応答の測定を世界に先駆けて行い、皮質律動解析からE/Iバランスが変容し、てんかん性放電の出現率が刺激強度依存的に変容することを明らかにし、国際学会(国際てんかん学会IEC 2023)でポスター(Kajikawa et al.)およびシンポジウム(研究代表者)で発表した。研究項目3については、若年発症てんかんに加えて、高齢発症てんかん・病初期の認知症患者の脳波データ収集を開始し、今後の萌芽的探索のための脳波データベース構築に着手した。加えて、横浜市立大学生理学講座との共同研究で、焦点てんかんのAMPA受容体PETイメージングと脳波のガンマ活動の相関解析から、頭皮上脳波のガンマ活動はてんかん焦点の興奮性の指標になることを明らかにし(Eiro et al. Cell Rep Med 2023)、研究項目2,3の理論的背景を支持する所見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2で刺激誘発性皮質律動応答から、E/Iバランスの指標となりえる皮質律動の抽出に着手することができ、予備的データを国際学会で発表することができた。研究3では若年発症に加え、高齢発症てんかんおよび認知症コホートの脳波記録の記録に予定通り着手することができた。AMPA-PETと脳波律動の比較検討から、研究2、3の理論的背景を支持する結果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
対照患者である、てんかん外科の術前評価のために硬膜下電極を慢性留置し、皮質皮質間誘発電位記録を施行する難治焦点てんかん患者、および若年・高齢発症てんかん・認知症病初期の患者を引き続きリクルートし、 研究項目1.てんかん性放電との比較検討による刺激誘発性E/Iバランス生理指標の検証 研究項目2.刺激誘発性E/Iバランス生理指標に基づく安静時脳波のE/Iバランス指標の同定 研究項目3.安静時脳波E/Iバランス生理指標を用いたてんかん病態・加齢に関わるE/Iバランス変容の萌芽的探索 につき研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
てんかん外科の術前評価のために硬膜下電極を慢性留置し、皮質皮質間誘発電位記録を施行する難治焦点てんかん患者の前向きのリクルートが予定より少人数となり、研究遂行に必要な頭蓋内電極などの消耗品の購入やデータ解析機器の導入を来年度に予定するため。
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