研究課題
近年、うつ病や自閉症の患者の一部に消化管の透過性亢進が関与していることが示され、病態との関連が示唆されている。同様な病態機序はストレス関連疾患や機能性身体症候群でも示唆されているが、科学的に十分検討されていない。本研究は、ヒスタミン産生能を持つ腸内細菌を無菌マウスに移植した単一細菌マウスを用い、ストレス関連病態の一部を再現し、腸内細菌由来のヒスタミンがストレス関連疾患の病態に及ぼす影響を検討する。ヒト常在菌の1つでありHDCを有するMorganella (M.) morganii(NBRC 3848株)を無菌マウスに移植した単一細菌マウス(M.morganii単一細菌マウス:以下MMマウス)を作製し、交配させ、出生した仔マウスを離乳後、3群に分け、7週時点で0.1%ヒスチジン溶液(低ヒスチジン群)、1%ヒスチジン溶液(高ヒスチジン群)および生理食塩水(コントロール群)を摂取させる。3群のマウスが9週齢、12週齢に達した時点で後述の行動解析を行う。解析終了後、安楽死させ、脳、血液、糞便を採取、生理活性アミンを測定する。マウスの行動特性は、ガラス玉覆い隠し行動(marble burying behavior: MBB)とオープンフィールド法(open field method: OFT)をアイソレーター内行動解析法(Neurogastroenterol Motil. 2013;25:521-8)にて評価する。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ヒト常在菌の1つでありHDCを有するMorganella (M.) morganii(NBRC 3848株)を無菌マウスに移植した単一細菌マウス(M.morganii単一細菌マウス:以下MMマウス)を用いて、ヒスチジン負荷による影響を検討した。出生した仔マウスを離乳後、1%ヒスチジン溶液(ヒスチジン群)を摂取させたところ、糞便中と血中のヒスタミン濃度が上昇した。またヒスチジン負荷によりガラス玉覆い隠し行動(marble burying behavior: MBB)における不安関連行動が増強していた。このように実験計画は順調に進展している。
これまでの研究成果を踏まえ、予定通りの研究を進めていく。次年度は、行動変容をもたらした脳内変化を解析する。脳、血液、糞便を採取し、ヒスタミンなどの生理活性アミンを測定する。具体的には、脳を脳幹、視床、前頭皮質、海馬の4部位に分割し、それぞれの部位における生理活性アミン濃度測定とメタボローム解析を行う。メタボローム解析は、水溶性低分子代謝物と脂肪酸濃度はガスクロマトグラフィー・質量分析計にて測定し、脂質、極性水溶性代謝物の解析は液体クロマトグラフィー・質量分析計により行う。生理活性アミン類(フェネチルアミン、プトレシン、カダベリン、トリプタミン、チラミン)は液体クロマトグラフィー・質量分析計にて測定する。
2023年度は、生理活性アミンの解析に用いるキット・カラム代、メタボローム解析にかかる費用がまだ不要であったため、次年度に繰越が生じた。次年度は、生理活性アミンの解析を無菌マウスの実験で行うために、無菌マウスを保持している東海大学への旅費、解析に係る費用、これらの実験結果を学会で発表する海外出張旅費として使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件)
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