研究課題/領域番号 |
23K18288
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柳田 素子 京都大学, 医学研究科, 教授 (70378769)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 霊長類 / ネフロン数 |
研究実績の概要 |
ヒト腎の機能単位「ネフロン」の形成は胎児期に終了し、生下時のネフロン数はその腎臓の予備力を表している。また、生下時のネフロン数は出生時体重と相関し、低出生体重児は将来の末期腎不全リスクが高いことも知られている。研究代表者は独自に、妊娠中の母の喫煙や、児が低出生時体重であったことが3歳児検診における蛋白尿と関連することを報告しており、ここからも胎内環境と生後の腎臓病の関連性が示唆される。このように、胎内環境(特に栄養変化)が生下時のネフロン数と生後の腎臓病発症に影響を与えることは疫学的には明らかだが、そのメカニズムは十分には明らかにされていない。上記解析を困難にする一因は、げっ歯類モデルと霊長類のギャップである。げっ歯類は生後もネフロン新生が継続するため、胎内環境の影響を受けにくい上、多胎妊娠であり相違点が多いため、霊長類における胎内環境と腎発生の関連に焦点を当てる必要がある。本課題では、腎発生における低ネフロン数刺激とエネルギー代謝の関連性を解析するとともに、霊長類胎児腎のspatial transcriptomicsを用いて、低ネフロン数胎児腎における胎内環境応答性遺伝子を網羅的に解析する。さらに得られた遺伝子群の機能をヒトiPS細胞由来腎オルガノイドで検証することで、ヒトのネフロン数決定機構に迫る。 2023年度は、生体内のアデノシン三リン酸(ATP)のFRETバイオセンサーAteamをR26遺伝子座にノックインしたマウス(Ateamマウス)(Yanagita M et al. J Am Soc Nephrol. 2020)を用いて胎児腎の器官培養を行い、腎発生におけるエネルギー代謝ダイナミクスをリアルタイムに可視化することに成功した。加えて、各種代謝経路阻害薬を投与した際のエネルギー代謝変化を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
担当研究者の努力により、胎児腎におけるATP可視化を順調に実施することができた。加えて、共同研究者との円滑なコミュニケーションにより、胎児腎のサンプルを多数入手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ATP可視化マウスを用いた解析をさらに進めるとともに、サル胎児腎におけるSpatial transcriptomics、特にPhoto-isolation chemistry (PIC)-RNAseqを実施することで、胎内環境応答性遺伝子を同定する。研究代表者は既に予備的な実験でPIC-RNAseqの条件の最適化を終えており、進捗が期待できる。加えて、iPS細胞由来の腎オルガノイドを用いて、得られた知見を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究者が別の実験の用途で回収した胎児組織を解析することが可能になったため、胎児作出に必要な経費が一部不要になったため
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