研究課題/領域番号 |
23K18307
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
田中 正光 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20291396)
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研究分担者 |
栗山 正 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30398226)
伊藤 剛 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (60607563)
佐々木 一樹 公益財団法人佐々木研究所, 附属研究所, 研究員(移行) (80260313)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | GMN / 巨多核癌細胞 |
研究実績の概要 |
巨大または多数の核を持つ、originの組織から逸脱した奇妙な形の巨/多核癌細胞(Giant and/or Multi Nucleated):GMN腫瘍は自然発生のものと放射線/化療後のものが存在する。前者は多形細胞癌などに分類され、膵癌や肺癌に多い高悪性度群である。GMN腫瘍は休眠的(dormant)に経過する場合もあるが、Progeny(子孫細胞)が再燃腫瘍を形成し転移もする。GMNは不等分裂により、外見上GMN型と単核細胞が混在する多様なProgenyを生む事を培養実験で観察した。これらはいずれもゲノム変異が蓄積した癌細胞で、悪性度が高まっている。新たに細胞分裂の視点からGMN癌細胞の生存・産生の機構を考え、再燃/転移の治療標的分子を抽出することを目的としている。特にGMNとProgenyでゲノム変異が多い事は、ネオアンチゲンの形成も多い可能性を示すため、免疫療法の有効な治療標的となるGMN抗原の同定を目指した検討を行った。初年度はノコダゾール処理等を利用して、GMNを高率に引き起こす膵癌細胞モデルを作成した。それらの親細胞株とGMN化癌細胞を用いて、全エクソンシークエンス(WES)およびmRNAシークエンスのデータを取得した。またネオアンチゲンを考慮して、HLAに提示された抗原を免疫沈降で収集してペプチド質量分析を行う検討を開始した。今後それらの結果を照合して標的抗原の抽出を進めてゆく。また、上記GMN化膵癌細胞によるマウス腫瘍組織の特性として癌関連線維芽細胞(CAF)の産生が強く見られたため、その分子特性の解析を進めると共に、親株癌細胞のGMN化への関与について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際のヒト腫瘍でもGMNの頻度が比較的高い膵癌細胞において、GMNモデルが作成でき、そのツールを用いてゲノムとmRNAのデータベースの作成まで完成し、今後の分子抽出の基盤が得られた。また蛋白質・ペプチドの解析が進行中で、それらの総合比較へ移行してゆける状態になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
GMN膵癌細胞からのHLA結合抗原の同定を引き続き進め、すでに取得した全エクソンシークエンスおよびmRNAシークエンスの結果と照合して、GMN癌細胞に特有なゲノム変異に基づく癌抗原の選別を行ってゆく。最終的にはヒト病理標本において、その出現頻度を調べ有用性を検証したい。またGMN癌細胞の成り立ち、特に間質細胞によるGMNの形成や維持についての検討を行い、GMN癌に特徴的な間質微小環境の解明を進める。作成した膵癌GMN細胞の中で、マウスへの移植において腫瘍内に豊富な線維芽細胞を誘導するものを確認している。その腫瘍内線維芽細胞と、親株癌細胞による腫瘍の線維芽細胞をシングルセル、またはバルクのmRNAシークエンスで比較検討する。抽出分子群の中から特に細胞外因子に着目して、親株およびそのGMN癌細胞株の細胞分裂、細胞移動に影響するものを培養実験で選別する。GMN型を産生する因子、またはその子孫細胞にGMN型を維持させる因子を同定してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に取り行った遺伝子解析が、外部受託に加え所属機関の共用施設として導入された機器の使用を併用したために当初見積もりより安価に施行できた。また次年度にかけて行う蛋白質・ペプチド解析と、それらの取得データから目的遺伝子の抽出および解析に要する項目が今後多数派生するため、次年度に予算の比重をかけておく必要が生じた。特にシングルセルや多重遺伝子の空間解析を行う場合に単項目当たりの支出額が大きい。
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