研究課題/領域番号 |
23K18320
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
横山 詩子 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70404994)
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研究分担者 |
黒滝 大翼 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特任准教授 (10568455)
中村 隆 東京医科大学, 医学部, 助教 (30772371)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 弾性線維 / 細胞外マトリックス / 組織工学 / 平滑筋 |
研究実績の概要 |
大血管では血圧変動を緩衝して効率よく血液を送達するために「弾性線維」が不可欠である。しかしながら成体では弾性線維の形成能は失われており、弾性線維は再生されない。したがって、慢性炎症による弾性線維の破壊を特徴とする大動脈瘤は不可逆的に進行して治癒することはない。弾性線維の形成に必要な構成分子は30種以上にのぼり、個々の分子の役割は明らかにされつつあるが、適切な実験系が存在しないために、多くの分子を統合して精密な立体構造をとる弾性線維を形成させる機序はいまだ不明である我々はラット新生仔大動脈平滑筋細胞にマトリクスナノ薄膜を形成させて細胞を積層することで、細胞のみから層状に弾性線維がde novo形成される生理的な三次元血管モデルを構築した。本研究ではこの独自モデルを用いて弾性線維形成のマスター制御因子を見出し、弾性線維を再生させる新規治療法を開発することを目的とした。本研究では、従来の単層培養やin vivo実験では明らかにできなかった時空間的な弾性線維形成の機序を包括的に解明することで、弾性線維の再生による大動脈瘤の積極的治療法の開発や、将来的には高い伸縮性が欠かせない肺や皮下組織の再生治療にも繋がる礎となる知見が得られることが期待される。2023年度は、本三次元血管モデルの弾性線維形成が従来弾性線維形成に関与することが知られている分子によって制御されているかを検討した。既知の弾性線維構成成分であるfibulin-4をゲノム編集で欠損させた細胞を積層すると弾性線維形成が認められなかった。これらより本モデルを弾性線維形成の機序の解明に用いる妥当性が示されるとともに、弾性線維制御に主たる役割を果たす候補蛋白が得られたときの検証実験が可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本モデルを弾性線維形成の機序の解明に用いる妥当性が示されるとともに、弾性線維制御に主たる役割を果たす候補蛋白が得られたときの検証実験が可能であることが示されたため。
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今後の研究の推進方策 |
弾性線維形成過程を再現した本血管モデルを用いてステージ特異的マーカーを選定する予定である。弾性線維が形成が始まるときと、形成が進んでから、といった各ステージのサンプルでbulk RNA-seqを行った後、DEseq2を用いて発現差異解析等を行い、各ステージを代表する分子を選定し、その機能を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の価格が予定よりも安価に抑えられたため差額が生じた。
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