研究課題/領域番号 |
23K18323
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
小林 祥久 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30734628)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 発がん / MET |
研究実績の概要 |
肺がんは最も死亡者の多いがん種である。分子標的治療薬が一度効いても1-2年で必ず耐性を獲得して効かなくなってしまう。これまで肺がんの薬剤耐性機序解明とそれを克服する併用療法の研究をしてきたが、耐性が起こった後の事後対応としての併用療法の効果は限定的であり、画期的な治療法の開発には肺がんがどのように起こるのかという根本的な発がん機構の解明が必要であると考えた。 本研究では、最多の発がん遺伝子ファミリーRASのスプライシングに関する新規発がん機構を解明した実験系 (Nature 2022) をMET遺伝子に応用することで、MET変異がんへの新規治療開発を目指す。 MET遺伝子のエクソン14がスキップする変異は肺腺がんの5%にみられ、METチロシンキナーゼ阻害剤のカプマチニブとテポチニブが日米で標準治療薬として保険承認済みである。METのエクソン14にはユビキチンによる蛋白分解に必要なCBL結合部位があるため、このスキップによりMET蛋白が分解されず過剰蓄積してがん化すると従来考えられている。しかし、CRISPR-Cas9ゲノム編集技術によってMET遺伝子変異モデルを作成し、CRISPR METモデル細胞のシングルクローンで薬剤感受性を評価したところ、予想外にMET変異だけでは発がん性に不十分であることがわかった。そこで、発がんに必須の未知の要素をゲノムワイドに探索するために、約2万個の遺伝子を網羅的にノックアウトするゲノムワイドCRISPRスクリーニングの実験系を新たに構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノムワイドCRISPRスクリーニングの実験系の条件設定を繰り返し、実験系の構築を継続する。CRISPR-Cas9ゲノム編集によって作成したMETエクソン14スキッピングモデル細胞を用いて、スクリーニングを実施する。その後、候補遺伝子の機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2万個の遺伝子を網羅的に解析するゲノムワイドCRISPRスクリーニングの実験系を立ち上げるにあたり、当初はライブラリー調整およびデータ解析を外注で実施するものとして計上していたが、非常に高額であるため共同研究を実施することとした。これによって、大幅に物品費・解析費を節約することができ、翌年度に予定している大量の細胞実験及び候補遺伝子の機能解析に必要な費用へと有効活用できる。
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