研究課題/領域番号 |
23K18329
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40294459)
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研究分担者 |
藤原 智洋 岡山大学, 大学病院, 講師 (80639211)
近藤 彩奈 岡山大学, 大学病院, 医員 (80910512)
吉田 晶 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 技術職員 (00910514)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 肉腫 / 腫瘍微小環境 / 腫瘍随伴マクロファージ |
研究実績の概要 |
微小環境を構成する免疫細胞からの攻撃を避ける作用を減弱する抗PD-L1抗体をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬は骨軟部肉腫においては奏功率が極めて低いことが明らかになっており、免疫療法における新しい治療アプローチの開発が求められている。肉腫における腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophage; TAM)やT細胞などのリンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocyte; TIL)を含む腫瘍内免疫ネットワークの詳細は明らかにされていない。このネットワーク解明は新たな免疫療法創出の足がかりとなり、免疫チェックポイント阻害剤に抵抗性である軟部肉腫に対するブレイクスルーとなり得る。本研究では、①肉腫細胞が微小環境に存在する免疫細胞に及ぼす効果の包括的な理解、②肉腫細胞が免疫微小環境変化を引き起こすメカニズムの解明、③新規治療薬機軸としての応用を目的とした。本年度は、原発性悪性骨腫瘍で最も頻度の高い骨肉腫、軟部肉腫において最も治療に難渋する未分化多形肉腫におけるサイトカインアレイを行い、肉腫微小環境形成を促進する複数の候補分子を特定した。また、その液性因子によるTAM形成とその機能を確認し、阻害剤によりその機能が抑制されることを確認した。興味深いことに、TAMの制御だけではなく、さまざまなTILの動態にも影響することが明らかとなった。また、治療奏効性軟部肉腫と治療抵抗性軟部肉腫における免疫微小環境の構成細胞の違いを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、肉腫細胞から分泌される液性因子の網羅的解析、肉腫組織の免疫微小環境評価、シングルセルシークエンス解析、マルチオミクス解析、肉腫免疫環境ネットワーク形成を阻害する治療薬開発を計画していた。今年度は、原発性悪性骨腫瘍で最も頻度の高い骨肉腫、軟部肉腫において最も治療に難渋する未分化多形肉腫におけるサイトカインアレイを行い、肉腫微小環境形成を促進する複数の候補分子を特定した。また、その液性因子によるTAM形成とその機能を確認し、阻害剤によりその機能が抑制されることを確認した。また、治療奏効性軟部肉腫と治療抵抗性軟部肉腫における免疫微小環境の構成細胞の違いを明らかにした。これらのアッセイは当該年度の目標としており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
肉腫の免疫微小環境評価を治療奏効性ならびに抵抗性別に明らかにし、シングルセルシークエンスによりその構成細胞の分子プロファイルを明らかにする。その結果に基づき治療薬の候補を広げ、その治療薬により肉腫微小環境の構成細胞においてどのような変化が起きているかを明らかにすることで、肉腫免疫微小環境ネットワークを解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
マルチオミクす解析を行う予定であった患者の診療予定変更に伴い、それに対して予定していた予算が次年度使用額として生じた。予定通り、次年度に予定患者のこの額を用いてマルチオミクス解析を実施する。
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