研究課題/領域番号 |
23K18336
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高畑 雅彦 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (40374368)
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研究分担者 |
照川 アラー 北海道大学, 医学研究院, 助教 (00723074)
堀 千明 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50722948)
遠藤 努 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (90805293)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 腸内細菌叢 / 骨腸管連環 |
研究実績の概要 |
3つの異なる環境(研究協力施設)で飼育された老齢C57BL6マウスの大腿骨、脛骨、椎骨を採取し、マイクロCTを用いて骨形態計測を行った。老齢マウスは同じ施設で飼育された場合でも、体重や骨密度、骨梁構造パラメータにばらつきが大きく、飼育された環境ごとの違いについては統計学的な有意差は検出できなかった。この結果を用いて異なる環境で骨密度や骨構造の違いを検出するために必要なサンプルサイズを計算したところ、ひとつの施設で必要なマウスが数百匹と算出されたことからこの実験系で違いを検証することは難しいと判断した。また老齢マウス作成には長期間を要することに加えて、動物愛護の観点からも多数のマウスを使用して研究を行うことは難しいと判断した。また3匹程度を使用して行った骨マクロファージサブセットのポピュレーション解析でも明らかな差を検出することはできなかった。 しかし、これらは想定された結果であり、あらかじめ対策として計画していた腸内細菌叢に直接介入するモデルを作成する研究2への準備を開始した。具体的には、抗生物質カクテルを飲水に混ぜて投与するモデル作成のための予備実験を開始した。アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシンなど複数の抗生物質を投与したが、飲水量が少なく体重増加が減弱した。甘味料を飲水に混ぜることにより飲水量の改善傾向を認めており、現在、体重の推移を観察中である。投与薬剤や投与方法の条件の最適化が終了次第、本実験を開始する予定である。予定どおり2年目から抗生剤や短鎖脂肪酸投与による腸内細菌叢を変化させた場合の骨免疫および骨量、骨密度、骨質変化の観察を開始できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの異なる環境(研究協力施設)で飼育された老齢C57BL6マウスでは飼育環境の違いにより腸内細菌叢が異なり、その結果として骨密度や骨梁構造に差がでることを想定して実験計画を立案していた。しかし、老齢マウスでは個体差が大きく、100匹を超えるサンプル数で環境間の差を検討しなければ違いを明らかにできないことがわかった。動物実験として行うことが難しいサンプル数であり、骨マクロファージサブセットのポピュレーション解析でも違いを検出することが難しいことが明らかになった。この結果は想定の範疇であることから、2年目に予定している抗生物質カクテル投与方法の最適化を行い、抗生剤や短鎖脂肪酸含有飲水で腸内細菌叢を変化させた場合の変化を調査する研究の準備を整えている。
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今後の研究の推進方策 |
予定どおり、2年目は抗生物質カクテルや短鎖脂肪酸含有飲水で腸内細菌叢を変化させた場合の骨密度や骨梁構造の変化、血清骨代謝マーカーの変化を調査する。このモデル作成は単一施設で行い、飲水を除く飼育環境は一定とする。これらの介入を行ったマウスの骨髄から単離したマクロファージをフローサイトメトリーにかけ、骨マクロファージサブセット(F4/80+CD52+, F4/80+MRC2+およびF4/80+P21+細胞)のポピュレーション解析を行う。骨に変化がみられれば、無菌的に採取、凍結保存しておいた便を用いて、16S rRNA配列決定をターゲットとした細菌組成のメタゲノム解析を行う。細菌組成と骨マクロファージサプセット、骨密度や骨梁構造データを統合解析して、腸内細菌叢の変化が骨代謝、骨密度に影響を与えるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定した異なる環境(施設)で飼育したマウスについて、アウトカムである骨密度や骨梁構造パラメータにばらつきが大きく、動物実験で許容されるサンプル数で実験を行うことが困難であることが判明した。そのため、サイトカインアレイや便の細菌組成のメタゲノム解析の実施は一部に留め、研究2の抗生物質カクテルや短鎖脂肪酸を用いた腸内細菌叢への介入研究のサンプル数を増やし、そちらに資金を用いることにしたため。
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