研究実績の概要 |
粘膜上皮細胞は分泌型IgAと基底膜側で受容体を介して結合し、管腔側に分泌するという重要な免疫機能を果たしているが、その詳細は不明である。本研究では上気道粘膜上皮細胞が果たす免疫担当細胞としての側面に着目し、上皮細胞の機能的多様性を呼吸器感染性微生物感染・非感染時におけるシングルセルを含めたトランスクリプトーム解析・分泌型IgA受容体 (polymeric immunoglobulin receptor: pIgR) の局在変化・挙動・結合解析を用いて解明する。pIgRは上皮細胞で産生される免疫グロブリン受容体であるが、これまで報告のないpIgRのレパトア解析を通じて上皮細胞の免疫担当細胞としての新たな機能的側面を探索することは、粘膜免疫のみならず呼吸器感染性微生物に対する局所投与型ワクチンを含めた予防・治療戦略開発に強い波及効果をもたらす。 初年度はadenoid組織からsingle cell isolationを行い、それぞれRSウイルス感染群と非感染群に分けて同数の細胞を培養し、RSVの感染実験を行った。それらの組織について培養48時間後に固定処理を行なって、10xchiromiumを用いたsingle cell RNA sequenceを行った。結果については現在解析中である。また本計画の予備検討の結果、初代培養咽頭扁桃上皮細胞ではRSV感染後にpIgRの発現がmRNAレベルで有意に減少することを見出している (n = 5, adjusted p 値 0.03)。シングルセル解析を上皮細胞でも行っておりpIgRについて引き続き解析を行う。
|