研究課題/領域番号 |
23K18360
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡田 芳幸 広島大学, 病院(歯), 教授 (70566661)
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研究分担者 |
佐伯 昇 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (30325170)
吉田 結梨子 広島大学, 病院(歯), 助教 (80889270)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | sleep bruxism / baroreflex / sympathetic nerve / hypoxia / blood pressure |
研究実績の概要 |
睡眠中は交感神経活動が減弱し、血圧が低下する。この反応が欠落すると、夜間高血圧を発症し、脳血管・心血管疾患等の重篤な循環器疾患を招くことが知られている。申請者は咬合刺激が圧反射感受性の低下と筋交感神経活動の亢進による昇圧応答を誘発することを覚醒時のヒトで確かめたことから、睡眠時の咬合刺激である睡眠ブラキシズムが同様の反応を示し、これらが睡眠時の生理反応と拮抗し、夜間高血圧の要因となると考えた。ところが、睡眠ブラキシズムに伴う循環動態やこれらの発生機序は不明であり、予防する方法もない。そこで、本申請課題では人工気象室において研究対象者である健常成人に通常酸素濃度下および低酸素濃度下で睡眠をとらせ、両者から得られた関連データを比較評価することで、睡眠ブラキシズムによって誘発される循環動態とその発生機序を明らかにする計画を立てた。 2023年度はまず、対照環境である通常酸素濃度であるルームエアー下で睡眠時ブラキシズムの発生頻度、発生時の循環動態、交感神経活動を評価した。その結果、通常酸素濃度のルームエアー下の睡眠では睡眠時ブラキシズムは1時間に約12回発生していた。また、その際、覚醒時の咬合刺激中の循環動態と同様に血圧、心拍数および交感神経活動が増加していることを確かめた。また、睡眠ブラキシズムに先立ってSpO2が低下していることを確かめ、低酸素が睡眠ブラキシズムの誘発因子の候補であることも統計的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工気象室を借用する関連施設が遠方であるため、予定していたよりも測定期間の確保と関連施設が設置される地域の研究対象者をリクルートするのに多くの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は睡眠中に低酸素に暴露することで化学受容器を刺激し、通常酸素濃度のルームエアー下の睡眠よりも睡眠時ブラキシズムが増加するかを評価する。また、この際、血圧および心拍数が上昇していること、これらの上昇がルームエアー下での睡眠と比較して増強していること、および、睡眠時間全体の血圧上昇率が増加していることを確かめる。これに加え、睡眠時ブラキシズム時の昇圧反応には起床時の咬合と同様に圧受容器反射感受性の低下を伴うか否かも観察する。さらに、これを基に酸素飽和度の低下初期に咀嚼筋群を電気刺激することでブラキシズムを抑制することができるか検証する。実験遂行にあたっては、睡眠実験開始直前に詳細な問診を実施して低酸素睡眠を行う研究対象者の健康状態を確かめるとともに、測定中はモニタリング、測定後においては自覚症状を評価し、より安全な測定に努める。 実験の進捗度によっては当初計画していた人工気象室の借用の代替案として、簡易的な低酸素ルームを当該研究室にリースにて設置することを改めて予定し、測定実施の進捗について効率化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工気象室を借用する関連施設が遠方であるため、予定していたよりも測定期間の確保と研究対象者をリクルートするのに多く期間を要していることから、研究対象者への謝金、人工気象室の借用費、測定に関わる旅費などが次年度に使用する予定となった。 次年度に予定された測定を行うため、繰越資金は計画した通りの内容で使用する予定である。測定に関わる移動費、人工気象室借用費に関しては、進捗の遅れの要因となっているため、代替案として簡易的は低酸素エリアを申請者研究室に設置するためのリース費用に置き換える検討もしている。
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