研究課題/領域番号 |
23K18388
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
高野 裕久 京都先端科学大学, 国際学術研究院, 教授 (60281698)
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研究分担者 |
濱口 真英 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80350883)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 経口曝露 / アレルギー / 悪化 / メカニズム |
研究実績の概要 |
以下の二つの研究計画を実施した。 研究計画1. MPの慢性飲水投与によるアレルギーの発症・悪化影響の評価、及び、悪化メカニズムの解明 研究計画2. レーザーラマン顕微鏡によるMPの体内・細胞内局在と免疫応答の解析 本年度は、第一年度として、研究計画1を中心に実験を進めた。具体的には、高脂肪食(HFD)、普通食(ND)給餌下のマウスに、各種MP粒子(ポリスチレン, φ0,5μm)を、日常生活で想定しうる濃度(1000μg/L)を含め、連日飲水摂取させた。卵白アルブミン (OVA:アレルゲン)を用い、感作の後、チャレンジし、アレルギー発症・悪化(症状、組織学的変化、抗体価)、慢性炎症と免疫応答等を評価した。下痢スコアはND+OVA群とHFD+OVA群と比較し、ND+OVA+MP、HFD+OVA+MP群で有意に悪化した。血清OVA特異的-IgE発現についても同様にND+OVA+MP、HFD+OVA+MP群で有意に上昇した。小腸透過性はHFD群で総じて上昇していた。ルナ染色した小腸検体ではND+OVA+MP、HFD+OVA+MP群で好酸球数が有意に増加し、マルチカラーフローサイトメトリー法による小腸粘膜固有層の好酸球数や2型自然リンパ球も有意に増加していた。小腸mRNAシークエンスの結果からエンリッチメント解析(Gene set enrichment analysis)を実施すると、MP投与群ではIL6-AK-STAT3シグナルやTNFAシグナルに関わるgene setの発現が上昇していた。さらに小腸を病理学的に評価すると、ND+OVA+MP、HFD+OVA+MP群では絨毛の萎縮や陰窩の延長など、小腸の炎症を示唆する所見を認めた。以上の結果から、MPは小腸の炎症を惹起することで食物アレルギーの増悪をきたしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究進捗状況としては、上述のように、高脂肪食、普通食給餌下のマウスに、MP粒子を、日常生活で想定しうる濃度を含め、連日飲水摂取させた。卵白アルブミン (OVA)を用い、感作の後、チャレンジし、アレルギー発症・悪化(症状、組織学的変化、抗体価、各種サイトカイン等)、Dysbiosisの発症・悪化、性炎症と免疫応答等を評価し、アレルギー発症・悪化メカニズムを解明した。また、好酸球や2型自然リンパ球に注目し、悪化メカニズムを明らかにした。腸内細菌叢解析も併せて実施しており、今年度5月に結果が到着すれば、研究計画1は完遂できる。それらの進展に応じ、研究計画2も進めることができる。すなわち、MP粒子の体内・細胞内局在と免疫応答の関連に注目し、研究を発展させることが可能となる。研究実績の概要に記述したとおり、研究計画はほぼ達成されたと判断されたため、おおむね順調を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、(1)高脂肪食、普通食給餌下、組成、粒径の異なるMPの慢性飲水投与下に、アレルゲンを感作、その後、経口的にチャレンジし、MPがアレルギーの発症・悪化に及ぼす影響とその異同を明らかにする。(2) Dysbiosis、慢性炎症等の観点から、アレルギー悪化メカニズムを解明する。特に、MP粒子の体内・細胞内局在と免疫応答の関連に注目する。以上より、(3) MPの組成や粒径の相違により、アレルギー悪化影響やそのメカニズムが異なることを指摘し、アレルギーに対する環境衛生学的対策の有用性を新たに提案する。これらの目的を達成するため、昨年度に続き、以下の二つの研究計画を実施する。 研究計画1. MPの慢性飲水投与によるアレルギーの発症・悪化影響の評価、及び、悪化メカニズムの解明 研究計画2. レーザーラマン顕微鏡によるMPの体内・細胞内局在と免疫応答の解析 研究計画1に関し、腸内細菌叢解析も既に実施しており、今年度5月に結果は到着する予定となっている。 以上の研究計画の遂行により、『MPの経口曝露は、特に高脂肪食下に、Leaky Gut症候群、小腸粘膜透過性亢進により、アレルゲンの体内移行を増加させる。また、Dysbiosisにより腸内や関連リンパ組織における免疫応答の変調を誘導する。これらのメカニズムにより、MPの経口曝露はアレルギーを悪化させる。』ことを明らかにしていくことをめざす。特に、本年度は、対象とするMPを増やすことと、MPの体内局在と生体応答の関連について解析を進めていく計画とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、「(1)MPがアレルギーの発症・悪化に及ぼす影響を明らかにする。(2) Dysbiosis、Leaky Gut症候群、小腸粘膜の透過性亢進、慢性炎症等の観点から、アレルギー悪化メカニズムを解明する。特に、MP粒子の体内・細胞内局在と免疫応答の関連に注目する。以上より、(3)アレルギーに対する環境衛生学的対策の有用性を新たに提案する。」ことをめざし、以下の二つの研究計画を実施している。 研究計画1. MPの慢性飲水投与によるアレルギーの発症・悪化影響の評価、及び、悪化メカニズムの解明 (2023‐2024年度) 研究計画2. レーザーラマン顕微鏡によるMPの体内・細胞内局在と免疫応答の解析 (2023‐2024年度) 昨年度は、第一年度として、研究計画1を中心に実験を進めたところ、ある種のMPによる明確なアレルギーの発症・悪化が認められた。このため、詳細なメカニズム解明を先行的に進めた。その結果、レーザーラマン顕微鏡によるMPの体内・細胞内局在と免疫応答の解析は、本年度に主に進めることになった。また、対象とするMPの種類も増やす予定であるため、次年度使用額を残した。今年度も、研究計画1,2を粛々と進め、これらの推進のために使用する計画とする。
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