研究課題/領域番号 |
23K18460
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安永 憲司 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (50510004)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 誤り訂正符号 / GV限界 / ランダム線形符号 / リスト復号 |
研究実績の概要 |
良い誤り訂正符号を構成するという問題自体の計算量に着目する課題であり,構成の可能性と不可能性の両面から取り組み,計算の複雑さの解明を目指す.本年は,良い符号を構成する技法についての調査を行った.線形符号に対して,ランダムパンクチュアリングを適用することで最適なリスト復号性能を持つことを証明する技法が進展しており,任意の低バイアス符号に対するランダムパンクチュアリングは,ランダム線形符号と同等の局所性(GV限界や最適リスト復号性能の達成を含む性質)を保持した符号の構成につながるという結果や,リード・ソロモン符号のランダムパンクチュアリングが最適なリスト復号性能の達成可能性につながるという結果が最近報告されていることがわかった.その他,ランダム短縮化,ランダム線形化多項式を用いた構成などが,良い符号の構成法がにつながることが報告されている. また,誤りを発生させる通信路を攻撃者とみなした計算量制限通信路に対して,公開鍵暗号のように,受信側が秘密鍵を持ち,送信側が公開鍵で符号化する設定を考えることで,二元対称通信路と同等の誤り訂正性能を実現する可能性があることを確認した.これまでに,送信者側が秘密鍵を用いることで誤り訂正能力を高める手法や,ランダムに選ばれた乱数を送信者と受信者ならびに通信路(攻撃者)が知る設定の符号は存在したが,受信側が秘密鍵を持つ非対称な設定における構成法はこれまでに提案されていないものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,構成問題の計算量の下界を示すことを想定していたが,最近の研究の進展状況や他の研究者との意見交換により,構成問題の可能性の方向から着手することにした.その結果,良い符号を構成するためのアイディアが出てきており,研究は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ランダムパンクチュアリング等を用いた技法による構成は,従来のランダム線形符号に比べ,ランダムネスの少ない良い符号の構成法とみなすことができる.ランダムネスをどこまで削減することができるか,また,必要なランダムネスの下界の導出などを行いたい. 計算量制限通信路に対しては,受信者が秘密鍵を持つ公開鍵設定による具体的な構成法の提案,適切な計算量的な仮定のもとで,提案構成法の誤り訂正能力の評価を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は符号構成問題の計算量下界を示す方向の研究を進める予定であったが,最近の研究の進展を受けて,構成可能性の検討を進めることにした.研究計画の変更により,参加学会等も変更したため,次年度使用額が生じた. 予定を変更した学会への参加ならびに構成可能性の検討のための計算機実験を行う計算機の購入に使用する予定である.
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