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2023 年度 実施状況報告書

アイスコアに含まれる過去の有機物エアロゾル粒子の粒径と化合物組成の測定方法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K18516
研究機関北海道大学

研究代表者

飯塚 芳徳  北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (40370043)

研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
キーワードエアロゾル / アイスコア / 有機物
研究実績の概要

本研究はラマン分光器に新しいラマンレーザーを導入し、過去の有機物エアロゾル粒子の粒径や化合物状態を分析する手法の確立を目的とする。その手法を、世界で最も沈着エアロゾルが保存されているグリーンランド南東部のアイスコアに適用して、産業革命前から現在までの有機物エアロゾルの粒径と組成を復元することである。
本研究ではすでに申請者が確立してきたアイスコアから過去のエアロゾル粒子を抽出する手法を改良し、有機物クリーンにするために孔径0.1マイクロメートルの有機物除去フィルターや炭素フリーの配管に改良し、有機物的にクリーンな乾燥空気を作成した。次に、エアロゾルをメンブレンフィルターではなく、鏡面金属板などラマン不活性の試料抽出台を用いる。こういった装置の改良により、アイスコアに含まれる過去の有機物エアロゾルの粒径と化合物組成を分析する手法を開発した。また、有機物の検出に強いとされる赤色のラマンレーザーを顕微ラマン分光器に導入した。中央アジアヒマラヤのアイスコアをクリーンな状態で昇華させ、氷に含まれる直径数マイクロメートル程度の不純物粒子を抽出し、不純物のラマン分析を実施した。その結果、有機物と思われる波長1300から1400㎝-1のピークを検出した。この波長はCH3もしくはCH2の結合を示す可能性が高く、この微粒子が有機物を有する可能性が極めて高いことを示唆している。これはアイスコアに含まれる数マイクロメートルの微粒子を検出できたことを示す成果である。ただ、この波長をもつ有機物がどのような化合物なのかが不明であり、今後、いくつかの有機物の標準試料のラマンスペクトルを測定し、有機物の同定を進めていく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究はラマン分光器に新しいラマンレーザーを導入し、過去の有機物エアロゾル粒子の粒径や化合物状態を分析する手法の確立を目的とする。本研究ではすでに申請者が確立してきたアイスコアから過去のエアロゾル粒子を抽出する手法を改良し、有機物クリーンにするために孔径0.1マイクロメートルの有機物除去フィルターや炭素フリーの配管に改良し、有機物的にクリーンな乾燥空気を作成した。次に、エアロゾルをメンブレンフィルターではなく、鏡面金属板などラマン不活性の試料抽出台を用いる。こういった装置の改良により、アイスコアに含まれる過去の有機物エアロゾルの粒径と化合物組成を分析する手法を開発した。また、有機物の検出に強いとされる赤色のラマンレーザーを顕微ラマン分光器に導入した。また、中央アジアヒマラヤのアイスコアをクリーンな状態で昇華させ、氷に含まれる直径数マイクロメートル程度の不純物粒子を抽出し、不純物のラマン分析を実施した。その結果、有機物と思われる波長1300から1400㎝-1のピークを検出した。この波長はCH3もしくはCH2の結合を示す可能性が高く、この微粒子が有機物を有する可能性が極めて高いことを示唆している。これはアイスコアに含まれる数マイクロメートルの微粒子を検出できたことを示す成果である。ただ、この波長をもつ有機物がどのような化合物なのかが不明であり、いくつかの有機物の標準試料のラマンスペクトルを測定し、有機物の同定を進めていく必要がある。

今後の研究の推進方策

本研究のもう一つの目的は、開発した手法を、世界で最も沈着エアロゾルが保存されているグリーンランド南東部のアイスコアに適用して、産業革命前から現在までの有機物エアロゾルの粒径と組成を復元することである。そのため、上述した有機物の同定を進めるとともに、グリーンランド南東部のアイスコアに適用して、産業革命前から現在までの有機物エアロゾルの粒径と組成を復元する。試料はすでに確保されており、分析を進めていける段階にある。ラマンスペクトルが示す有機物の同定が困難な場合は、有償のライブラリーなどの利用を進めていく。
具体的にはグリーンランド南東部のアイスコアから産業革命前の氷と森林火災のイベントが確認された年、SOxなどの人為的な排出が多い年代などの氷に含まれる不純物を測定し、それぞれの環境でどのような有機物が主成分であるのかを個別粒子スケールで解明する。

次年度使用額が生じた理由

B-Aの差額は81円である。これは、ごく少額であり、次年度の消耗品に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] SE‐Dome II Ice Core Dating With Half‐Year Precision: Increasing Melting Events From 1799 to 2020 in Southeastern Greenland2023

    • 著者名/発表者名
      Kawakami Kaoru、Iizuka Yoshinori, et al.
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Atmospheres

      巻: 128 ページ: ー

    • DOI

      10.1029/2023JD038874

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Microplastics in snow from protected areas in Hokkaido, the northern island of Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Ohno Hiroshi、Iizuka Yoshinori
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-023-37049-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] グリーンランド南東ドームアイスコアに含まれる硫酸エアロゾルの粒径分級装置の開発2023

    • 著者名/発表者名
      川上薫,飯塚芳徳, 植村立
    • 学会等名
      雪氷研究大会
  • [学会発表] 皇居お堀堆積物とグリーンランドアイスコアに記録された人為起源エアロゾルの化学分析2023

    • 著者名/発表者名
      田中祥太,栗栖美奈子,名取幸花,飯塚芳徳, 高橋嘉夫
    • 学会等名
      環境化学物質3学会合同大会
  • [学会発表] グリーンランド南東部SE-Dome II アイスコアを用いた過去220年間の涵養量と融解履歴の復元2023

    • 著者名/発表者名
      川上薫,飯塚芳徳, 捧茉優, 松本真依, 斎藤健, 堀彰,石野咲子, 藤田秀二, 藤田耕史, 高杉啓太, 畠山匠, 浜本佐彩, 渡利晃久, 江刺和音, 大塚美侑, 植村立, 堀内一穂, 箕輪昌紘, 服部祥平, 青木輝夫, 平林幹啓, 川村賢二, 的場澄人
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
    • 招待講演
  • [図書] 変わりゆく北極 1章第5節「氷床コアからわかる変化」2024

    • 著者名/発表者名
      飯塚芳徳
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      北極域研究加速プロジェクト

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公開日: 2024-12-25  

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