研究課題/領域番号 |
23K18542
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
淺原 時泰 大阪大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (20632318)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ポリ乳酸 / 表面改質 / 二酸化塩素 / 光反応 / セルロース / 接着 |
研究実績の概要 |
ポリ乳酸(PLA)に対して、当研究室で独自に開発した二酸化塩素への光照射をカギとする酸化改質を行い、酸化度の異なる様々なPLA酸化接着フィルムサンプルを作製した。トルイジンブルー染色法により算出した表面カルボキシ基量を酸化度として定義し、反応時間、温度を変えることで酸化度の異なる(0~6.0×10-5 μmol/mm2)複数のサンプルを得た。 得られたサンプルについて、当初木材との複合化を想定していたものの、木材の応用用途である構造材料としてPLAの耐熱性の問題が考えられた。そのため、応用用途も加味した上で、ろ紙などの紙材料との複合化を検討することとした。接着性の評価として、酸化PLAとろ紙を熱圧着した後に、そのサンプルの引張試験を行い、PLA単体および紙片単体の引張強度と比較することで行った。また、水の接触角試験により、撥水性の評価も行った。引張試験の結果、未酸化品と比べて酸化サンプルにおいて1.8倍の引張強度を示したものの、PLA単体と比較すると8割程度の強度であった。また、水の接触角試験では酸化サンプルにおいて接触角が増加しろ紙面においても撥水性が向上していることから溶融したPLAが浸透していることが考えられる。 今年度は紙と酸化PLAの接着を評価対象としたが、紙と木材の何れの材料もセルロースを基本骨格としていることから、ここで得られた知見は将来的に木材との接着にも適用可能と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化PLAの評価法の確立と、二酸化塩素光酸化の反応制御に基づく酸化度のコントロールを可能にすることができた点で、改質バイオマスプラ作製の基盤を確立できたと言え、当初計画よりも進展している。 一方で、当初想定していた木材との複合化において、構造材料としての応用に対してPLAなどのバイオマスプラスチックの耐熱性が問題となるため、耐熱性に優れたバイオマスプラスチックの探索が必要となり、ターゲットの変更が必要となった。その中で、バイオマスプラと紙の接着という新たな複合材を評価することとして、一定の成果を得ることができている。 また、当初想定していた深さ方向の分析については、装置の問題などから十分に検討出来ておらず、次年度に繰り越すこととした。新たな分析装置(XPS)が導入されたことから、これら課題は次年度に想定通り進むものと期待される。 以上のような状況から、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
酸化PLAの酸化度合いにおける深さ方向の分析を行う。X線光電子分光法(XPS)によるエッチング分析を行うことで、酸素官能基がどの程度の深さまで生成しているか明らかにする。また、必要に応じて化学修飾XPSを行うことで、官能基種の特定を行う。 化学修飾XPSにおいては、化学修飾の深さについても明らかにする必要があるため、モデル樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)やポリアクリル酸(PAA)などの水酸基、カルボキシ基を有するポリマーのフィルムを作製し、その化学修飾XPSと深さ方向分析を行う。 XPSおよび化学修飾XPSにより明らかにした化学組成(深さ方向を含む)と接着強度との相関を解明し、接着性に関与する官能基種を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会出張の1件を行わなかったことなどから、次年度使用額が生じた。二年目に発表の機会が増えることから、出張や論文発表に係る予算として全額執行予定である。
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