研究課題/領域番号 |
23K18571
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
武居 昌宏 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (90277385)
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研究分担者 |
川嶋 大介 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (10813785)
小笠原 諭 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (30546685)
村田 武士 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80415322)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 電気インピーダンス・トモグラフィ / 単細胞可視化 / 薬剤反応評価 / イオンチャンネル活性評価 / イオン濃度可視化 |
研究実績の概要 |
これまで、センシングシステムの開発と薬剤反応に関する理論の構築とその細胞計測、イオンチャンネル活性評価、および薬剤反応に関す研究を行ってきた。その内容は、(1)細胞外電圧活性化に基づく非侵襲性電位依存性イオンチャネルスクリーニングシステムの開発、および薬剤反応評価、(2)単細胞スケール可視化ためのマイクロ電気インピーダンス・トモグラフィセンサー(μ-EIT sensor)の開発と細胞の計測。 (1)に関して、細胞膜に電圧を印加しながら電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)計測が可能なPCBセンサーを開発した。細胞膜に電圧を印加すると、hERGチャンネル(電位依存性イオンチャネル)が開き、イオン輸送によって細胞外のイオン濃度が増加する。EIT計測によって導電率分布を再構成することで、細胞外イオン濃度の増加からイオンチャンネルの活性評価を達成した「国際会議-1」。また、hERGチャンネルの阻害薬のIC50(半数阻害濃度)を計測することで、薬剤反応の評価も行った「国際会議-2」。 (2)に関して、8個電極を持つ直径50μmのμ-EIT sensorを開発し、単細胞の可視化を行った。多周波数EITを使用して、単細胞の導電率分布を可視化することで、細胞質と細胞核のタンパク質発現の違いによる細胞種の識別を達成した「国内会議-5」。更に、複素の感度行列を使用したEITの開発により、単細胞の導電率と誘電率分布を同時に可視化することができた「国内会議-7」。 従来に、イオンチャンネルの薬剤反応と単細胞の可視化には、コストが高く侵襲性のある方法(パッチクランプ法、染色法)を使用している。しかし、本研究の革新的な方法を利用することで、非侵襲的なイオンチャンネル活性評価、医薬品開発の効率化、および細胞内情報可視化により、創薬、再生医療、細胞生物学などの分野の発展に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度には、センシングシステムの開発に加えて、等方性イオンチャネルの薬剤反応評価も行った。この内容は、令和6年度の目標である「2-①4Dイオン濃度異方性実験」の一部となる。具体的には「カリウムチャネル(hERG)が過剰に発現したHEK 293細胞を使用とイオンチャネル拮抗薬を部分的に投与」である。このため、計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、等方性イオンチャネルの薬剤反応評価と単細胞の可視化を行ってきた。これらの研究成果を基盤として、(1)薬剤投与後の導電率分布変化に基づいて、単一細胞スケールで異方性イオンチャネルの薬剤反応を評価する、(2)ネルンスト・プランクの流束方程式に基づいて、イオン輸送モデルを構築し、膜透過率テンソルPを用いて異方性を高精度に評価する、と(3)EIT計測で得られた結果の検証実験として、従来法(蛍光染色、クライオ電子顕微鏡)での検証実験を行う。 (1)を実現するために、μ-EIT sensorを改良する。薬剤投与時の細胞制御性を向上させるために、μ-EITセンサーに流路を設ける。EIT画像解像度を向上させるために、電極数を16個に増加する。EITで計測する際に、顕微鏡での蛍光検証実験との同時に実施を可能にするために、センサー構造を設計変更する。 (2)を実現するため、ネルンスト・プランクの流束方程式を用いて、膜透過の電位勾配依存と濃度勾配依存の二種類の流束を考慮したイオン輸送モデルを構築する。EITで得られた導電率分布変化をモデルに導入し、流束計算を可能にする。モデルパラメータを最適化し、流束から膜透過率テンソルPを推定する。膜透過率テンソルPに基づいて、異方性比率(FA)を開発し、イオンチャネルにおける異方性特性を比較分析と評価する。 EIT計測で得られた結果((1)と(2))の検証のため、従来法である蛍光染色法とクライオ電子顕微鏡法を用いて、EIT計測と同じ条件下で実験を行う。蛍光染色法は細胞スケールで細胞周囲のイオン濃度分布を計測し、EIT計測で得られた導電率分布を検証する。クライオ電子顕微鏡法はイオンチャネルスケールで細胞膜の異なる部位におけるイオンチャネルタンパク質を観察し、イオンチャネル活性の異方性とEIT計測で得られた導電率分布の異方性が一致することを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、EIT計測用のPCBとガラス複合基板を海外の専門メーカーに発注した際、納期が長引いたため、その発注にかかる予算(約135,000円)を翌年度に繰り越しました。翌年度交付予定額の1,500,000円と合わせた使用計画は以下の通りである。 (1)直接経費:1,635,000円(繰越金を含む)。内訳:①部品費(繰越金を含む):785,000円。②旅費:200,000円。③人件費・謝金:350,000円。④その他:300,000円。 イオン濃度分布の異方性計測の確立のため、ハードウェアの開発、実験実施を行っていき、イオンチャネル異方性4Dセンシング法の実現を目指していくため、主な用途は以下の通りである。 部品費:主にPCBとガラス複合基板、μ-EITセンサーの材料、阻害薬、顕微鏡部品、および実験消耗品、旅費:学会発表のための国内出張、人件費・謝金:研究補助員の給与
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