研究課題/領域番号 |
23K18572
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷水 直樹 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (00333386)
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研究分担者 |
木戸 丈友 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任講師 (00401034)
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20407141)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | オルガノイド / 交感神経 / 胆管疾患 |
研究実績の概要 |
マウスにThioacetoamide(TAA)を投与することで肝臓線維化を誘導するモデルに対して、交感神経が発現するβ-adrenergic receptorのagonistであるIsoproterenol (ISO)およびantagonistであるPropranolol (PPL)を投与した。肝臓組織の線維化をSirius red染色で評価し、ISOおよびPPLによる線維化への影響を検討したところ、ISOとPPL投与によって、それぞれ線維化の亢進と抑制が起こることが明らかになった。ISO投与時の遺伝子発現プロファイルの変化を調べるためにMicroarray解析を行った。その結果、ISO投与によってコラーゲン発現の上昇とMMP活性を阻害するTIMP発現の上昇が認められた。 肝障害の進展における上皮―神経の相互作用の変化を解析するツールとして、神経支配を受けた肝臓オルガノイドを構築することが必要であると考えた。そこで、共培養に用いる交感神経細胞を得るために、ヒトiPS細胞から交感神経の誘導を試みた。既報を参考にして分化誘導を行い、細胞の形態観察、遺伝子発現のPCR解析に加えて、神経細胞共通マーカーと交感神経マーカーの発現を免疫染色で検討した。その結果、90%以上の細胞が交感神経細胞に分化していることを確認した。さらに、分化誘導したヒトiPS細胞由来の交感神経細胞に対してニコチンを添加したところ、培地へのノルアドレナリン分泌が認められた。以上の結果から、ヒトiPS細胞から機能的な交感神経細胞の誘導が確認された。共培養の予備実験として、肝臓オルガノイド用の培地を用いてヒトiPS細胞由来の感神経細胞を培養したところ、細胞の維持が可能であることが分かった。今後、交感神経細胞と肝臓細胞の共培養実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS細胞からの交感神経誘導が可能になり、オルガノイド作成を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスへのTAA投与によって誘導される肝線維化に対して、線維化抑制効果を示したPropranolol (PPL, β-adrenergic receptor antagonist)投与モデルについて、組織解析と遺伝子発現解析を進め、交感神経の抑制が肝線維化に与える影響を解析する。 ヒトiPS細胞から誘導した交感神経細胞からスフェロイドを作成し、胆管接続型肝臓オルガノイド近傍に配置することで、両者の共培養を行う。まず、生体内と同様に胆管構造と交感神経の並走が再現されるかを確認する。次に、神経線維が進展した胆管接続型肝臓オルガノイドに対して、線維化に関与する肝星細胞および組織常在性マクロファージであるクッパー細胞を導入する。神経細胞、星細胞、クッパー細胞を含む肝臓オルガノイドに対して、肝障害を負荷し、胆管増生、星細胞の活性化、コラーゲン線維の蓄積などを指標に病態進行を評価する。 生体内の肝臓組織に近似した神経―上皮の相互作用を再現するために、新たに培養デバイス開発と共培養条件の至適化を試みる。シリコン樹脂を用いて神経スフェロイドおよび胆管接続型肝臓オルガノイドを設置する2つのコンパートメントを持つ培養デバイスを作製する。2つのコンパートメントを接続する通路の幅や距離を至適化することで、神経が上皮組織に進展可能な条件を設定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
神経共培養後の細胞についての遺伝子発現解析を次年度に行うことにしたため。
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