研究課題
本研究では、臨床応用が進むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの高生産技術確立を目的として、研究代表者らが開発したヘルペスウイルス(HSV)プラットフォームを活用し、持続的にAAVベクター生産が可能な革新的ベクター生産系開発に取り組む。本年度は、HSVベクターよりAAVベクター構成因子を発現させるための発現カセットの作製、HSVゲノムへの組み込み及び機能確認を計画していた。まず、AAV構成因子Rep/Cap遺伝子をHSVゲノムへ組み込むためのシャトルベクターを開発した。並行して、AAV末端逆位反復配列間に導入遺伝子としてレポーター遺伝子であるAcGFPを組み込んだプラスミドを開発した。本プラスミドをAAV生産細胞に組み込んだ組み換えAAV生産細胞を開発し、そのAAVベクター生産効率を確認したところ、その生産効率は予想より効率が悪いことが判明した。従って、当初の計画を変更し、本発現カセットについてもHSVゲノムへ組み込むために、シャトルベクターを開発した。これら作製したAAVベクター構成因子、レポーター遺伝子発現カセットをHSVベクターに組み込むことができるか検証するために、ドナーカセットを搭載したHSVベクターゲノムに対して組み換え反応を実施し、HSVベクターにAAVベクター構成因子、レポーター遺伝子発現カセットをそれぞれ搭載した。同HSVベクターをベクター生産細胞にて増幅を試みたところ、問題なく増幅し、同HSVベクターの生産・精製を完了した。これらのHSVベクターより導入遺伝子であるAAVベクター構成因子、レポーター遺伝子が発現するか確認を行ったところ、効率よく発現することがわかった。現在の本ベクターを用いてAAVベクター生産が可能か検証を進めている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、HSVベクターに組み込みためのAAVベクター構成因子、AAV末端逆位反復配列間に挿入されたレポーター遺伝子発現カセットの作製、及びこれを用いたシャトルベクターの開発、そしてHSVベクターへの組み込みを予定していた。AAVベクター構成因子、レポーター遺伝子発現カセットについては問題なく、作製が完了した。一方、レポーター遺伝子発現カセットについてはAAV生産細胞に組み込む予定であった.しかし、AAVベクター生産効率の悪さから、計画変更を余儀なくされたが、本コンストラクトについてもHSVに組み込むことで事なきを得た。また同シャトルベクターを用いた組換えHSVベクターについても支障なく作製が可能であった。従って、本研究計画は予定通り進行していると考えている。
今後は、開発したHSVベクターを用いたAAVベクター生産・精製確認、及び同AAVベクターの機能確認を予定している。同時に、いずれのHSV遺伝子がAAVベクター生産に必須か確かめるために、バックボーンが異なるHSVにも同様にAAVベクター構成因子を導入し、AAVベクター生産を試みる。同時に、AAV構成因子変異導入とウイルスタンパク質耐性生産細胞の開発にも着手し、AAVベクター生産効率の改善を図る。
開発したHSVベクターを用いたAAVベクター生産・精製確認が年度を跨いで行っており、次年度でのベクター生産・精製関連消耗品に使用する予定である。
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