研究課題/領域番号 |
23K18588
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20581614)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | コラーゲン / エラスチン / 人工靭帯 / 人工腱 / 複合材料 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
従来軟組織(血管や腱,靭帯)の損傷や病変に対して治療現場で用いられてきた合成高分子製の人工組織は剛性が高過ぎしなやかさに欠けること,および長期の安定性に課題がある.そこで本研究は人体でそれらの軟組織を構成するタンパク質であるコラーゲンとエラスチンを線維状態で複合化させ,「しなやか」な人工組織を開発すること目的としている.今年度はエラスチンを線維化した状態でコラーゲン線維と複合化する方法の検討をおこなった.想定している人工組織は腱,靭帯の代用となるものなので紐あるいは棒状の組織であることから,エレクトロスピン法で作製したエラスチン線維膜を棒状に加工したものについてコラーゲン線維との複合化を目指した.より具体的には,作製したエラスチン線維膜を化学架橋したのち,ガラス棒で線維膜を巻き取ってロール状にした.これを中和したコラーゲン溶液に浸漬することでコラーゲン溶液をエラスチンロールに含浸させ,続いて加温することで含浸したコラーゲン溶液中のコラーゲン分子を線維化させ,エラスチン線維と複合化させた(ロール法).この複合体に力学負荷と化学架橋を同時に作用させることで線維配向誘導と架橋による強度向上を同時に目指したものの,エラスチンロール内へのコラーゲン溶液の浸透が少なく,エラスチンの特性が強く出た複合体の作出となった.そこで複合化法を改良し,エラスチン線維膜をロール状にすることなく平膜のまま中和コラーゲン溶液を含浸させたところ,エラスチン線維とコラーゲン線維がよく共在する複合体を作製することに成功した(平膜法).これに線維配向誘導と化学架橋を同時に施したところ,ロール法と比べて破断強度を10倍となった.これはロール法と比べてエラスチン量に対するコラーゲン量を増加させることできたためと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初考案した複合化法の問題点を的確に改良することで,より強度の高い人工組織の開発に成功したと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は人工組織を適用する部位,症状に応じた力学特性値を推定し,その値を目標として複合化法を最適化することに目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
作製した人工組織に対する力学試験における試験片把持方法の検討に想定より長い時間を要したため,少し実験の進行が遅れた.このことにより初年度使用金額に少し余りを生じることとなった.次年度使用額は2年目の実験に用いるコラーゲン,エラスチン等の材料費に充てる予定である.
|