研究実績の概要 |
当該年度中は下記二課題について研究を進めた。すなわち①技術のもつ主観的意味の認知的解明、および②人間主体の能動的自己改善の能力の解明である。 まず、①については、関連文献の精読や解釈、および明らかになった成果を具体的な技術に応用するための考察をおこなった。特記すべきこととしては、すでにおこなっていた事前研究(“Subjective Meanings of Technology,” SPT2023, Tokyo, June 2023として発表)の内容を精査発展させ、具体的な技術的人工物を題材にした研究を行う見通しを得た。その研究内容は2024年中に学会発表を計画している。 次に②については、二つの方面から成果を得た。まず一つ目に、すでに開始していた事前研究(“The Cyborg Meditation Manifesto,” SPT2023, Tokyo, June 2023として発表、および“Care of the Self in a Technological Society: Stiegler and Verbeek,” INTERFACEing 2023, Kobe, September 2023として発表)の内容を精査発展させ、いわゆる大陸哲学の伝統における「反省」ないし「現象学的還元」の研究をふまえて研究を進展させる見通しを得た。つぎに、英米系自律論の成果の観点から本研究の内容を精査発展させ、とりわけAIアドバイザーという技術に焦点を当てた研究をおこなった。その成果は学会発表済みであり(「サイボーグ的な自己批判・自己改善の考察」、日本現象学・社会科学会第40回大会、京都、2023年12月として発表)、現在、英語論文として投稿中である。 本研究は生活世界の技術的構成にたいする反省的関与としての自律を明確化するという点で、自律論を技術研究の観点から推進するという意義をもつ。
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