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2023 年度 実施状況報告書

西田『善の研究』前後の新資料からみた自由論 その形成の背景と発展の可能性

研究課題

研究課題/領域番号 23K18631
研究機関石川県立看護大学

研究代表者

中嶋 優太  石川県立看護大学, 看護学部, 講師 (50976131)

研究期間 (年度) 2023-08-31 – 2025-03-31
キーワード日本哲学 / 西田哲学 / 自由 / 新資料 / J.M.Guyau
研究実績の概要

2023年度の研究では第一に新資料の調査を行い、石川県西田幾多郎記念哲学館に所蔵されている、未調査の冊子「実在及道徳論」についてすべてのページの高精細写真撮影を行い、調査を開始した。この冊子は『善の研究』の形成に関係している冊子「西田氏実在論及び倫理学」(金沢大学図書館蔵)と類似しているが、使用される活字等を比較した結果、版が異なることが判明した。『善の研究』形成のプロセスをたどるための資料が一つ増えたことになる。蔵書印から、この冊子「実在及道徳論」は西田幾多郎が第四高等学校教授時代に教えた原康次郎が所有していたことが明らかになっている。
第二に、西田哲学館ですでに整理されていた新資料について追加の調査を行った。その一環として西田幾多郎が四高教授時代に教えた論理の講義ノートを翻刻し、公表した(「「論理講義ノート」(A08:29-88)」『西田幾多郎未公開資料の研究資料化 報告7』石川県西田幾多郎記念哲学館、2024年3月)。以前から四高での心理講義にW.ヴントの影響があることは知られており、また、新資料『倫理学講義ノート』からは、倫理講義への影響も見て取ることができるが、さらに、論理講義においてもW.ヴントの『論理学』が踏まえられていることが明らかになった。
第三に、すでに公開されている新資料(特に「倫理学講義ノート」『西田幾多郎全集 別巻』)について思想内容の分析を行い、西田が『善の研究』の自由論をどのような方向へ洗練・拡張しようとしたかを探った。その研究の成果の一部は、「若き西田幾多郎の生の倫理 新資料「倫理学講義ノート」におけるギュイヨー受容」(『哲学研究』第611号、京都哲学会、2024年2月)として発表した。

現在までの達成度
現在までの達成度

2: おおむね順調に進展している

理由

哲学館で未調査だった資料の調査に関しては、実物の調査・写真撮影・翻刻作業という一連のプロセスの作業の流れを確認するため、第一の目標であった冊子「実在及道徳論」に注力して作業を進めた結果、当該冊子については高精細写真撮影を行ったうえで、調査手順を確立して、『善の研究』や冊子「西田氏実在論及び倫理学」(金沢大学図書館蔵)との照合作業を進めることができた。こちらの作業が予定を上回って進んだ半面、2023年度中に調査を開始する予定だった他の資料については作業が遅れている。
思想内容の分析に関しては、予定通り、主に『善の研究』の自由論の洗練・拡張の方向性について研究を進めた。

今後の研究の推進方策

新資料に関して、冊子「実在及道徳論」については、『善の研究』や冊子「西田氏実在論及び倫理学」(金沢大学図書館蔵)との異同、原康次郎の書き込み内容を分析する予定である。その書き込みは第四高等学校で西田の講義を聞いた学生が記したものであり、『善の研究』の元となった倫理講義において西田が実際にどのようなことを語っていたのかを知る手掛かりとなる。また、他の資料について調査・撮影を進める。
思想内容については、主に『善の研究』執筆以前の新資料を用いながら、その自由論の形成の背景について研究を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

交付決定から体制を構築して翻刻業務を委託するまでに時間を要し、予定通り翻刻業務を進めることができなかったほか、近隣での調査を優先した結果、県外での資料調査が進まなかった。
翻刻作業の体制は構築できたので作業の遅れを取り戻せる見込みである。また、近隣での調査が進んだので、今年度は県外での調査を進められる見込みである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 若き西田幾多郎の生の倫理 新資料「倫理学講義ノート」におけるギュイヨー受容2024

    • 著者名/発表者名
      中嶋優太
    • 雑誌名

      哲学研究

      巻: 611 ページ: 57-79

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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