研究課題/領域番号 |
23K18699
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷本 隆之 東京大学, 史料編纂所, 助教 (70982362)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 日本中世史 / 流通経済史 / 都市社会史 / 商人 / 問屋 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、商人の生業や所有、権利のあり方と組織との関係に着目して、日本中世の商人組織の実態解明を進め、中世流通経済史分野で近年進展を見せている貨幣や金融、海運等の諸分野と商人組織研究との間に議論の回路を開くことにある。今年度は以下の研究を遂行した。 ①戦国期の京都で活動した長坂口紺灰座の関係史料を主たる素材として、座組織の展開を権利所有の観点から考察した。その結果、応仁の乱を経た京都の空間構造・流通構造の変質が商人の営業権のあり方に変化をもたらし、その変化が戦国期における座の形成の動因となったとの知見を得た。以上の成果について、口頭報告を行うとともに論文を執筆し、現在投稿中である。 ②戦国期京都の商業・金融に関する史料の分析を通じて、商人や金融業者の権利・動産所有と彼らのネットワーク形成との関係を考察し、その成果をもとに口頭報告を行った。この論点についてはなお検討が必要であり、次年度の継続課題とする。 ③室町・戦国期京都の商人に関する史料の収集につとめ、国立公文書館、京都市歴史資料館での調査を行った。中世京都における商人組織の代表的形態である「座」は、16世紀末に多くが消滅することが知られている。一方で同時代史料がごく限られているため、その消滅過程は未解明の部分が多い。そのため、本年度の後半からは17世紀以降の史料にも調査の対象を広げ、近世商人の系譜や伝承から16世紀後半の中世商人の組織や結合の実態にせまる方途を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究会において2度の口頭報告を行い、論文の執筆・投稿によって成果公開に着手した。また関西方面での資料閲覧および調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
商人や金融業者の権利・動産・不動産所有と彼らの組織やネットワークとの関係について、分析を進める予定である。また17世紀以降の史料も含め、京都および畿内商人の関係史料の収集と分析を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象史料の変更および、調査先との調整の結果、調査の回数と期間が想定よりもやや減った。 次年度は物品費を当初の想定通りに執行するとともに、前年度におこなう予定であったものも合わせて、史料の調査と閲覧をおこなう。
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