研究課題/領域番号 |
23K18716
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
西本 志保子 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (70982651)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | 圧痕調査 / レプリカ法 / CTスキャン / 表出圧痕 / 潜在圧痕 |
研究実績の概要 |
2024年3月に発行された『中央史学』第47号において、小澤政彦氏、佐々木由香氏、小林謙一氏と研究ノートに「神奈川県相模原市大日野原遺跡の研究―藤野町史関連資料の紹介とレプリカ法による土器圧痕調査―」の題名で投稿し、査読を経て掲載された。報告者はレプリカ法による圧痕調査部分を分担しており、該当資料の圧痕調査をおこない、レプリカ同定をしたうえで電子顕微鏡写真を撮影して、その調査成果を明らかにした。 神奈川県相模原市に所在する縄文中期の大集落である上中丸遺跡の圧痕調査を5月から始めて、3月に現地での調査(相模原市立博物館)を終えた。土器総数 約2000点、総重量 約1200kgの図版に掲載された土器を全て調査した。成果として、ダイズ属種子10点、アズキ亜属種子10点、シソ属45点、サンショウ10点、キハダ種子8点、ミズキ5点など100点に及ぶ圧痕を確認した。この中でひとつの土器から複数の圧痕が検出された多量圧痕土器も複数見つかっている。中でもシソ属果実を37点、ダイズ属種子を1点含む、ほぼ完形の多量圧痕土器が検出されたことは特筆に値する。全国的に見てもこのような多量圧痕土器は珍しく、この土器は更に内部にもシソ属果実が入っている可能性が高く、CTスキャンで内部を撮影して確認する必要がある。上中丸遺跡の調査については、2024年3月に刊行された、中央大学文学部考古学研究室2023年度活動報告『諏訪原遺跡・丸山A遺跡』において、「植物遺体圧痕の研究」として概要を報告している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上中丸遺跡の圧痕調査が当初の予定よりも時間がかかったために、予定していた市内の他の遺跡調査はできなかった。しかしながらその原因は、上中丸遺跡の圧痕調査で予想以上の圧痕が検出されたためであり調査成果は予想を上回るものであったためである。今後は、報告に向けて、調査結果を整理していく段階となる。 2023年8月末に科研費申請が採択されたため初年度のみの研究報告であり、上記した研究実績と同様の進捗状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
上中丸遺跡の圧痕調査に関しては、調査結果を基に研究報告を執筆し、次年度中に公表する予定である。またシソ属果実の多量圧痕土器については内部の圧痕を調べる必要があるため、CTスキャン撮影が不可欠であり、それが速やかに実施できるようにする。 関連してシソ属混入の多重圧痕土器の集成をおこない、多重圧痕が入る土器に共通性があるのか土器研究からの考察をおこなう予定である。この成果は上記の上中丸遺跡の報告とは別途に論文として投稿する予定である。 予定していた茨城県石岡市白久台遺跡の圧痕調査のついては、5月より実施予定であり、9月までの現地調査を予定している。ゴールデンウイークの連休中に担当学芸員と話し合って詳細な日程と内容を決める。 加えて東京都の武蔵野台地の遺跡で圧痕調査の目途が立ったので、4月から予備的な調査をおこない、本格的に調査と始める予定である。 以前より調査中であった山梨県北杜市諏訪原遺跡では、発芽したシソ属果実を数点含む多量圧痕土器が見つかっており、先行研究では発芽するシソ属は珍しいとされているため、発芽実験を実施して、7月に文化財科学会でポスター発表(エントリー採択済)をする予定である。発芽実験の結果次第であるが、『文化財科学』への投稿も考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年8月末に科研費申請が採択されたため、人件費が予定通りに使い切れていない。更に数十万円必要とした電子顕微鏡撮影が先方の事情によって次年度に回さざるを得なくなった。該当する電子顕微鏡撮影費は次年度に繰り越しして予定通り使用する予定である。 人件費について、次年度は茨城県石岡市に宿泊しての遠方の圧痕調査をおこなうために出張費が必要となり、人件費は多めに使う予定がある。
|