研究課題/領域番号 |
23K18757
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
九島 佳織 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (80982991)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 民主革命 / 体制変動 / 正統性 |
研究実績の概要 |
本研究は、体制変動後にどのように統治者が民主的正統性を獲得するのかについて、民主化をめぐる情報伝達という視点から体制変動後の政治過程を分析し、その情報伝達の手段と効果を理論的及び実証的に明らかにするというものである。 研究実績としては、第一に、予備的考察を行った。研究の初年度である2023年度は、理論化に取り組む前にまず事実そのものや傾向を把握するために、データを中心に分析を行った。ここでは、民主革命(democratic revolution)と呼ばれる市民が主体となって起こす制度外の体制変動に対象を限定し、より詳細な分析に取り組んだ。この点については論文を執筆及び投稿を行い、査読付き学術雑誌に掲載されることが決定した。 第二に、理論の精緻化である。本研究では自国が民主化したことを市民に伝えるという情報発信を目的とした政策を「民主化シグナル」として概念化し、具体的な政策を特定するために民主化研究や地域研究の観点から既存研究を渉猟して議論を整理した。その成果として、政策の一つとして想定している国際選挙監視については理論的及び実証的に分析を行い、その内容を論文にまとめ海外の査読付き学術雑誌に投稿中である。現在は、選挙管理機関に注目しデータの構築に着手している段階である。以上から、本研究で明らかにしたい民主化をめぐる情報伝達の「手段」については、順調に研究を進めることができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の評価の理由として、理論的な枠組みを構築することに成功した点が挙げられる。プロジェクト初年度に研究の基礎となる部分を終えられたことで、次年度では実証分析の作業を集中して進めることが可能となった。 また、アウトプットが順調であったことも重要である。査読付き学術雑誌に掲載が決定した論文と、執筆を終えた複数の論文が投稿中の段階である。今後は、これらの論文が査読付き学術雑誌への掲載が決定されるように取り組んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針として、実証分析に取り組む。そのために、まずは量的に分析するためのデータを揃える必要がある。既存研究のデータセットでは網羅できない研究内容であることから、一次資料等をあたってデータを整備することが求められる。加えて、事例分析に着手する。国内外の研究機関や図書館を訪問して資料を収集する予定である。これらの資料をもとに、検証作業に取り組みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は理論部の作業を優先したため、実証分析にあたって必要な資料やデータ収集、フィールドワークを実施しなかった。これらの作業は、次年度に実施予定である。
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