研究課題/領域番号 |
23K18765
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福田 智洋 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (10979355)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | EU(ヨーロッパ連合) / 欧州委員会 / 国際行政 / 国際機構 / 国際公共政策 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、国際機構の自律性に関連して2023年度中に以下2つの研究活動を実施した。一つ目は、EU(特に欧州委員会)の「意思の自律」に関連するジェンダーに関わる政策過程の分析であり、二つ目は、欧州委員会の「行為の自律」を支える行政管理活動の様態に関する分析あった。 一点目については、欧州委員会によるジェンダー関連政策の形成・認証・貫徹についてその阻害要因を分析した。第一に、EU域内を対象としたジェンダー関連規範の形成・具体化は、市民社会ではなく欧州委員会を含む官僚組織において消極的であり、その姿勢がEU官僚制が依拠する資格任用原則(能力主義)や、グローバル社会の現代的規範に対する鈍感さに起因するものであったと指摘した。第二に、EUのジェンダー関連規範の対外的影響が限定的である要因が、EU内部の市民社会と官僚組織におけるジェンダー格差是正の進捗差として表出する矛盾や、第三国における政策過程および言説空間においてEUが自ら意図したとおりにそのイメージを表出できていないことにもあると指摘した。 二点目について、研究代表者は下掲1件の査読付論文1本を成果物として完成させた(単行本として出版する計画があるため、本文の公開は現在差し止めている)。当該実績は欧州委員会の「行為の自律」を支える行政管理活動に焦点を当てた記述的分析であり、欧州委員会が行政資源(人的資源・財政資源・法的資源・情報資源)をどのように調達・管理しているか、またその行政管理の様態が何を目的として経時的にどのように変化してきたのか詳解した。当該実績では、欧州委員会が過程志向的な正統性の確保を目的として、各資源を巡る技術性の高い概ね漸進的な制度改革により、行政管理活動の透明性、包摂性、有効性、アカウンタビリティを増進させたと結論付けた。なお、当該実績の内容は研究代表者の所属機関における表彰を以て高く評価された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度後期は、研究活動を通して必要となる重要度の特に高い物品の調達、本研究に強く関連する理論的基礎や、関連する最新の動向を論じた研究成果の収集・渉猟、ベルギー・ブリュッセルへの渡航によるEU諸機関・諸施設からの資料収集、「行為(資源)の自律」に関する研究の総括および成果公表、EU職員との接触を予定していた。3月6日から17日にかけての現地滞在では、本研究課題に必要となる資料の全てではないが、渡航時点で必要とした資料は全て入手することに成功した。下掲の研究成果公表も併せて、これらの項目は全て完全な形で実施された。他方、同時期に同じく予定していたジェンダー関連政策の「貫徹」に関する研究成果の英語での公表準備については、英文校閲のフェーズにこそ到達しなかったものの、当該年度末に作成した研究成果公表の構想が、2024年度中に開催される海外学会での口頭発表に耐えうるものと認められ、同年度中の成果公表の機会を確約させることができた(予定表題下掲)。 以上を総合的に評価し、研究の進捗状況は予定と完全に同一ではないものの、存外の進展も見られたため、本研究課題は概ね順調に進展していると評価する。 FUKUDA, Tomohiro “Rethinking EU Gender Diplomacy: Norm Promotor or Loophole for Asian Countries?”, Pan-European Conference on International Relations 2024, Lille University, 27-31/8/2024.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、2024年度も従前の研究計画通りに実施される予定である。2023年度中に調達を完了させた設備面を活用し、具体的に以下の要領で研究を遂行する。 第一に、8月後半に海外学会報告の機会を得たことに関連して、リールカトリック大学(フランス)にて本研究課題の研究成果報告を行う。なお、同学会にて得た海外拠点の研究者からのコメントを踏まえて内容を修正し、2024年度中に海外査読誌(Journal of European Public PolicyまたはPublic Administration)への投稿を見据えた英文校閲を完了させる。 また、当初同時期に予定していた資料調査およびEU官僚へのヒアリングを目的とする欧州委員会(ベルギー・ブリュッセル)への訪問を、上述の報告機会と組み合わせ、経済的・時間的効率性を確保しつつ実施する。 以上の海外での研究活動と並行ないし前後して、本研究課題の関連文献の購読・渉猟、ならびに関連分野の研究者との討議を含む国内学会への参加を複数回予定している。また、上述の諸研究活動の妨げにならないことを前提として、本研究課題にてその知見を活用すべく現在実施中の研究について、国内学会で報告の機会を得て、国内査読誌に年度内に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度末(3月)に実施した海外での研究活動に係る旅費を、研究代表者が関与している別プロジェクトの予算を利用して支弁したため、その分の旅費を当該年度中に執行しなかったため。 次年度(2024年度)使用額については、8月に予定されているベルギーへの調査研究およびフランスでの学会発表の旅費として充当する。
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