研究課題/領域番号 |
23K18783
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 明久 大阪大学, 大学院経済学研究科, 講師 (60982569)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / 家族の経済学 / 累進所得税 |
研究実績の概要 |
本研究では、婚姻状態や結婚後の夫婦間の相互の力関係による意思決定を組み入れた動学的確率的一般均衡モデルを構築し、そのうえで (1)夫婦間の資源配分と相互の利得を加味し、社会厚生を最大化する所得税の望ましい累進度を明らかにする。また、(2) 新たな税制がもたらす世代・個人・性別・世帯間で異なる便益と、政策変更による労働供給や婚姻パターンの変化も定量的に示すことを目指すものである。 2023年度では、家族の経済学やマクロ経済学での累進所得課税の研究分野における関連研究のレビューを行うとともに、本プロジェクトに用いる理論モデルの検討を深めることができた。また、セミナー報告の機会を多数得て、研究の進捗について発表するとともに、多くの意見やフィードバックを得ることができた。 他方で、家計データの分析については、データ整備及び分析自体に時間を要しており、当初の計画よりも多少の遅れが生じている。これは、理論モデルにおける既婚家計の夫婦間の力関係を現実に観察されるものに近づけるため、これらを示唆する指標をミクロデータから読み取って分析する必要があるが、データの制約上、完全に対応するものがないため工夫を要することに起因する。また、家事労働における時間の負担や余暇の配分と、消費財の分配とでの推計に多少の差異が発生することがある。これについては、個票への回答者がどちらかに偏っていることから、夫婦間の家事負担に対する不公平感を反映しているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り、研究の進捗や現時点での結果などを研究セミナーなどで報告する機会があり、そこで参加者から有益なコメントや提案を受けることができた。しかしながら、理論モデルを現実の経済に近づけるために必須であるデータ分析とそれに基づいたより精緻なパラメータ推計に関しては、当初の計画より少々の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、まず最大の課題である家計データの分析について、特に独身家計と既婚家計の時間の使い方や所得、支出傾向などに注目して分析を行うことを目指す。また、既婚家計では夫婦間の財の配分などにも気を配り、分析を進める必要がある。 その上で理論モデルの細かい点を修正し、社会的に望ましい累進課税の度合いを特定することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の計画と異なる出費や、不要になった経費が存在したため、少額の繰越が発生した。大きな額ではないため、2024年度で使用することが可能と考えている。
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