研究課題/領域番号 |
23K18969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 星矢 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任研究員 (20983381)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 文化進化 / 階層性 / 言語進化 / 繰り返し学習 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世代交代を伴う文化伝達と二者間コミュニケーションなどの社会的相互作用が階層構造の創発に与える影響を検討することである。刺激系列学習実験のデータを分析した結果、個人で刺激系列の学習を繰り返し行うだけの場合はその個人が持つ学習のバイアスが増幅される一方で、世代交代を伴う文化伝達を行う場合は個人の持つバイアスの効果は低減し、その結果、より深い階層構造が累積的に文化進化することが示された。この研究は学習プロセスの個人間多様性を考慮する重要性を示唆した。 同様の実験課題を用いて他者と学習後の出力を繰り返し交換する相互作用実験を新たに実施した。成人約60名の参加者を対象に実験を行った結果、二者間相互作用は文化伝達と類似の効果を持つことが示された。さらに詳細な分析の結果、個々人が持つ事前予測の違いが多様な相互作用を生み出す鍵である可能性が示唆された。また、約20の養育者-子どもペアを対象とした実験を実施し、学習プロセスの発達的な多様性および創発する構造に対して多様性が与える効果を分析中である。 加えて、文化伝達に伴うdemonstrator biasが文化進化に与える影響を検討する計算論モデルを構築した。その結果、集団内の影響力の分布が文化進化のダイナミクスに大きな影響を与えることが示された。上記の研究と合わせて、集団は異質な個人から構成されるという現実的な仮定の下では、従来の多くの文化進化研究が想定してきた均一な集団とは異なる文化進化が生じることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しい研究機関でヒト実験を実施する環境を整備したことに加え、子どもを対象とした実験の協力先を確保することで発達科学的な検討も可能となった。また、計算機科学・発達科学・認知科学など様々な分野の研究者と連携することで、複数の論文の投稿・発表を行った。さらに、一連の研究者と新たな共同研究に向けた議論を開始している。関連するトピックに関して一般向けの書籍を出版した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、相互作用実験のデータ収集及び分析を実施する。また、得られた知見を公表するために、国内外の学会での発表、国際誌への論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力先の都合により、実験実施に参加謝金が不要になったため次年度使用額が生じた。次年度の所属研究機関での実験実施時に使用する予定である。
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