研究課題/領域番号 |
23K19014
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
寺門 康裕 東京電機大学, システム デザイン 工学部, 助教 (30783930)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 志村多様体 / アーベル多様体 / 四元数環 / 志村曲線 / 質量公式 |
研究実績の概要 |
志村多様体の法p還元上のbasic軌跡は、数論幾何的に興味深い性質を豊富に持っていると期待されている。しかしながら、basic軌跡の構造は非常に複雑であり、その具体的な性質は特別な場合にしか知られていない。申請者は、簡約代数群に付随するアフィン・ドリーニュ・ルスティック多様体と質量公式の理論を用いて、basic軌跡の性質を研究している。 2023年度は、武漢大学のJ. XueとAcademia SinicaのC.-F. Yuと共同で、総実体上の不定値四元数環上の歪エルミート形式のユニタリ群に付随するPEL型の志村多様体の場合について研究を行った。研究成果として、まず四元数乗法を持つ主偏極アーベル多様体のモジュライ空間としての志村多様体が空集合にならないための、四元数環に関する必要十分条件を与えた。また、その条件の下で、法p還元上の超特別軌跡(superspecial locus)が空集合にならないことを示した。さらに、良い素数pでの法p還元上におけるbasic跡の既約成分の個数に関する明示的公式を与えた。この結果は、ジーゲル・モジュラー多様体の場合のEkedahl・橋本・伊吹山・桂・Li・Oortらの結果の自然な一般化である。これに加えて、特別な場合である志村曲線について詳細に研究し、悪い素数pでの還元上のbasic軌跡の既約成分の個数に関する明示的公式を与えた。 これらの研究成果は論文にまとめて学術誌に投稿した。また、8月に中国科学技術大学で行われた研究集会「The 3rd Cross Strait Workshop on Arithmetic Geometry」と12月に京都大学数理解析研究所で行われた研究集会「代数的整数論とその周辺2023」で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず総実体上の四元数乗法を持つ主偏極アーベル多様体のモジュライ空間としての志村多様体が空集合にならないための必要十分条件を与えることができた。証明は四元数環上の歪エルミート形式に含まれる格子の存在条件を示すことに帰着される。 またその条件の下で、志村多様体の法p還元上の超特別軌跡が空でないことを示すことができた。証明は、四元数乗法を持つ主偏極超特別アーベル多様体に対応する、付加構造付きのデュドネ加群を構成することに帰着される。 さらに、アフィン・ドリーニュ・ルスティック多様体と質量公式の理論を用いて、良い素数pにおける還元上のbasic軌跡の既約成分の個数の公式も得た。 予想外の進展として、悪い素数における還元上の場合にも、志村曲線のbasic軌跡の既約成分の個数の公式を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
悪い素数における還元上のbasic軌跡の既約成分の明示的公式を、志村曲線に限らずに高次元に拡張する。そのためには、簡約代数群に付随するアフィン・ドリーニュ・ルスティック多様体の理論を用いた計算をさらに推し進める必要がある。そこでは簡約代数群の表現に関する重複度公式を使った記述が予想される。まずは古典的なヒルベルト・ジーゲル多様体の場合を考えたい。 また、これまでの研究は志村多様体の法p還元の代数的閉体上での性質を考えていたが、今後は有限体上での点や既約成分などの性質についても考えたい。 さらに、虚二次体に限らない一般のCM体上の歪エルミート形式のユニタリ群や、直交群、スピノル群に付随する志村多様体についても取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年8,9月に武漢・合肥・南京・台北に合わせて1か月余り出張に行ったが、その旅費は出張先の大学・研究機関から支払われたため、2023年度の旅費の実際の使用額は当初の予定を下回った。 この分は次年度の海外出張等に使用する予定である。
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