研究課題/領域番号 |
23K19032
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 真 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (20983919)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / 非従来型超伝導 |
研究実績の概要 |
有機超伝導体の一大物質群であるκ型BEDT-TTF超伝導体の理論研究を行った。8種のκ型BEDT-TTF超伝導体において常圧超伝導が報告されているが、超伝導対称性・転移温度は物質によって異なる。この違いの原因を明らかにするために、密度汎関数理論(DFT)および揺らぎ交換近似(FLEX)を適用した。結果として、BEDT-TTF分子の配置が持つ異方性の強さによって、磁気感受率のピーク位置が変化することが明らかとなった。この磁気感受率の差異によって超伝導対称性・転移温度が変化することが予想される。 本課題の開始と同時期に韓国のグループによって室温超伝導体の発見が報告された。銅ドープが施された鉛アパタイト(いわゆるLK-99)である。LK-99の主要構造は、κ型BEDT-TTF超伝導体と同様の三角格子である。本課題との関係性から、LK-99の研究も行った。LK-99の室温超伝導が事実であれば革命的な発見であったが、その後の追試によって超伝導の可能性が否定された。超伝導の証拠とされていた磁気浮上についても、超伝導ではなく強磁性が原因であるとの見解が示されている。しかしながら本物質で強磁性が発現することは自明ではない。そこで本研究ではLK-99の電子構造・磁気構造に関する第一原理的な研究を行った。結果として、純粋なLK-99では反強磁性を示すものの、微量な電子ドープによって強磁性が出現することを明らかにした。単純な三角格子では電子ドープによって強磁性が出現することは知られていたが、LK-99では簡単に実現可能なほど微量な電子ドープで強磁性が現れる。このLK-99の特徴は、三角格子が積層していることに起因していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな研究対象が加わり当初予定していた計画を変更せざるを得なかったが、三角格子系に対する新たな知見を得ることができたため。反強磁性・強磁性転移に着目した新たな研究結果が期待できる。κ型BEDT-TTF超伝導体に関しては、超伝導の計算が未完結である。これは、莫大な計算コストによるものである。計算スキムは完成しているため、計算コードの高速化およびパラメーターの工夫をして翌年度に実行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
LK-99の理論研究で得た知見をもとにして、新たな反強磁性・強磁性転移を探索する。これは非従来型超伝導に大きな影響を与えることが予想される。κ型BEDT-TTF超伝導体に関しては、超伝導の計算を完了するために計算コードの高速化を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に必要な計算量が変化し、今年度に計画していたワークステーションの購入を見送ったため。
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