研究課題/領域番号 |
23K19036
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
工藤 耕司 九州大学, 理学研究院, 助教 (20983927)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 非可換エニオン / トポロジカル秩序 / トポロジカル相 / 分数量子ホール効果 / トポロジカル超伝導 |
研究実績の概要 |
本年度では、トポロジカル秩序相及び非可換エニオンに関する以下の成果を挙げた。 (1)パートン理論はトポロジカル秩序相の典型例である分数量子ホール効果を整数量子ホール効果の観点で理解することを可能にする。本研究では、このパートン描像における断熱接続の可能性を数値的に議論した。エニオン励起固有の性質として、周期的な分数量子ホール状態は非自明な縮退を伴う。我々は球面系と等価な独自の格子模型を構築し、いわゆるトポロジカル縮退を伴わない状況下で整数及び分数量子ホール状態の断熱接続性を調べた。エニオンを伴う励起状態には断熱接続性が無い一方で、有限系の基底状態に関してはクロスオーバーが存在することを数値的に示した。 (2)非可換エニオンを生成するプラットフォームとして、量子ホール系と超伝導のハイブリッド系が挙げられる。本研究では、第二種s波超伝導/整数量子ホール接合系における不純物効果を数値的に調べた。超伝導近接効果及び不純物効果により、トポロジカル超伝導相が出現することを数値的に示した。エネルギーギャップやエンタングルメントスペクトラム、不純物に関するアンサンブル平均の計算を通して、トポロジカル超伝導相が出現する条件を詳しく調べた。さらに我々は、球面上での接合系の構築法の定式化も行なった。トポロジカル縮退を伴わない球面系は、トポロジカル秩序相の数値的研究において大変有用であり、さらなる理論展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
断熱接続性の研究を通してトポロジカル秩序相である分数量子ホール効果の新しい側面を解明することができた。さらに球面上での超伝導/量子ホール接合系の定式化及び不純物効果の数値解析を通して、非可換エニオン生成に関する成果を挙げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
非可換エニオン生成を念頭に、量子ホール系など具体的なトポロジカル秩序相固有の物性を調べる。さらに例えば接合系など新規な非可換エニオン生成プラットフォームを探索するとともに、具体的な模型の解析を通して非可換エニオンの多体特性を調べる。非可換エニオンのブレイディングさらにはトポロジカル量子コンピューティングの可能性も視野に入れ、研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議出張及び研究打ち合わせの頻度が当初の予定より少なかったため。次年度では、前年度に実施できなかった分の研究打ち合わせを行なう予定である。
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