研究課題/領域番号 |
23K19132
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
辻 勲平 東北大学, 工学研究科, 助教 (10984750)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 内部侵食 / 粒子法 / SPH / DEM / 浸透流解析 / 粒子再配列法 |
研究実績の概要 |
地盤の内部侵食(地盤内部を流れる浸透流によって微細な土粒子が移動・流失する現象)のメカニズム把握を目的とし,地盤をミクロな視点で観察した際の土骨格とその変形,そして骨格の間隙を流れる流体の流れを再現しうる,流体‐土粒子連成シミュレータの構築を推進した.これには,土骨格をなす土粒子の動きと土粒子形状を直接的に再現するため,個別要素法DEMによる地盤解析および間隙内部を流れる流体の解析には粒子法であるSPH法を採用している.ただし,従来のSPH法による浸透流解析では,SPH法そのものの計算精度の問題や,地盤内部での見かけの流体体積の膨張に伴う体積保存性の悪化が解析手法の大きな課題としてあがった.本年度,本研究では,高次の空間精度を有する高精度粒子法SPH(2)を用いた微分演算スキームを導入し,粒子法の計算精度の向上を実現した.さらに地盤の内外の流体の体積の長期的な保存性能に優れた新たな粒子再配列法(GDPS:一般化密度保存型粒子再配列法)を開発している.これらの要素技術を併用した高精度浸透流解析は,従来のSPH-DEMによる流体-地盤連成解析に比べ,圧力計算の安定性や体積保存性能が著しく改善しており,当初の目的であった内部侵食解析の精度を向上させうるものだと考えられる. 次年度以降,ギャップのある粒度分布を有した地盤の土骨格数値モデルを作成し,提案する高精度浸透流解析を実施することで,地盤内部で発生する内部侵食数値実験を推進する.さらに,微視的な内部侵食が巨視的な地盤の安定性へ及ぼす影響を推定しうるマルチスケール解析を計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたように,高精度粒子法による流体-地盤連成解析ツールの開発・高精度化を行った.また,流体解析における体積保存性能を向上させる新たな粒子再配列法を開発するなど,当初の計画にはなかった新たな計算手法の開発を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
初年度開発を進めた粒子法(SPH-DEM)による高精度浸透流解析ツールを活用し,地盤内部の微視的な領域で発生する内部侵食(特にSuffusion現象)の発生メカニズムの把握と,発生に伴う巨視的な力学的特性への影響(応力-ひずみ関係,限界動水勾配との関係等)の推定を目指す.具体的には,現実の地盤内部の土骨格を反映した数値間隙モデルを作成し,提案する高精度浸透流解析を実施することで,地盤内部で発生する内部侵食数値実験を行う.なお,数値解析の妥当性を検証すべく,内部侵食の室内実験との比較を検討している. 主な技術開発としては,スーパーコンピュータもしくはGPGPUを活用した大規模計算機能の開発と,微視的な内部侵食が巨視的な地盤の安定性へ及ぼす影響を推定するため,均質化法を援用したマルチスケール解析技術の基盤形成を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,透明粒子を用いた内部侵食実験を検討していたが,開発を進めていた数値シミュレータの課題解決を優先し,改良・高精度化に注力することとした.それに伴い,新たな計算手法の開発を行うことができたものの,実験の実施が行えなかったことから,透明粒子の購入を控えたため,次年度使用額が生じた. 次年度は大規模数値シミュレーションを行う計算機のレンタル費用および実験に使用できる透明粒子の購入費用に計上する予定である.
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