研究課題/領域番号 |
23K19182
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
池尾 直子 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (80647644)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 生体内分解性材料 / マグネシウム / in vitro fatigue |
研究実績の概要 |
本年度は、異なるカルシウム濃度を示す二種類のマグネシウム―カルシウム合金の作製を行い、大気中での機械的性質の評価を行った。カルシウム濃度の影響を明らかにするため、両材料の結晶粒径は5μm程度とした。準静的速度での引張試験により、カルシウム濃度の上昇により生じる固溶強化にともなう強度上昇が確認された。
そこで、大気中での疲労試験および疑似体液中での疲労試験を実施し、周囲環境の疲労特性への影響の解明に取り組んだ。この結果、大気中においては、カルシウム濃度上昇にともなう疲労寿命の改善が確認された。一方で、疑似体液中の疲労寿命は低濃度材のほうが優れた疲労寿命を示した。以上の結果は、大気中での強度および疲労寿命の向上に寄与するカルシウム濃度の上昇が、疑似体液中では疲労寿命を低下させることを意味する。今後、耐食性などを評価し、その要因を検討する必要がある。 過去の研究において、マグネシウムの粒界強度を評価した第一原理計算によりカルシウムは粒界強化元素であることが明らかとなっている。しかしながら、純マグネシウムの疲労試験においては、破面はへき開破壊を呈し、き裂は粒内を進展したと考えられたのに対して、本研究で使用したマグネシウム―カルシウム合金ではき裂は粒界を進展した。今後、本研究で作製したマグネシウム―カルシウム合金におけるカルシウムの偏析について検討し、第一原理計算の結果と相反する結果となった原因を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画したとおり、異なるカルシウム濃度を示す材料の疲労寿命の評価を達成した。次年度は想定外の結果となった理由について考察する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究で作製したマグネシウム―カルシウム合金におけるカルシウムの偏析について検討し、第一原理計算の結果と相反する結果となった原因を検討する必要がある。また、耐食性などを評価し、カルシウム濃度の上昇が疲労寿命の低下要因となった理由について解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
育児中のため、予定していた学会参加を一部減らした。このため次年度使用額が生じた。現在、白金の単価が上昇しており、分解性試験に必要な白金製消耗品が予定になかった値上がりが発生している。生じた差額をこちらの補填に当てる予定である。
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