研究課題/領域番号 |
23K19261
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 啓 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80983270)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 超原子化合物 / 水素化物 |
研究実績の概要 |
超原子価化合物は形式上オクテット則を超えた価電子をもつ p-ブロック(最外殻の p 軌道に電子が入る13-18 族)の典型元素化合物である.p-ブロック元素と同等の電気陰性度をもつ水素を配位子とした超原子価化合物(超原子価水素化合物)の合成は容易でなく,高水素圧力が必要であり,その合成例は一例のみである.多量な水素を含有する 高密度水素化物は高温超伝導や水素貯蔵,高イオン伝導など魅力的な特性が期待されるものの,安価な p-ブロック元素を用いた物質探索は上述の理由から進展しておらず,未開拓な研究領域といえる.近年では,DFT 計算により超原子価水素化合物の安定化構造が予測されたことで物質探索の余地が示された.この未開拓領域を切り拓くべく,本研究では高圧合成法および水素雰囲気下でのメカニカルミリング法を用いて超原子価水素化合物の物質探索およびそれらの特性評価をおこなう. 2023年度では,高圧合成法を用いて既報の K2SiH6 を基にカチオンサイトへの元素置換をおこない,固溶限界について検討を進めると同時に,[SiH6]2- が安定に存在できる結晶構造の探索をおこなった.K2SiH6 の合成条件と同様の条件で合成をおこない,得られた各種試料の粉末X線回折測定をおこなった結果,元素置換によるピークシフトが確認できた.この結果は固溶体の形成を示唆するものであり,探索対象とする相図上に化合物が存在すると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高圧合成法では一度の合成で得られる試料の量が限られており,1種類の固溶体形成を確認するために必要な試行回数が予想よりも多くなっているため,進捗がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は引き続き元素置換をおこなうだけでなく,得られた試料の特性評価を進める予定である.既報の K2SiH6 の結晶構造のみでなく,[SiH6]2- が安定に存在できる結晶構造についても検討をすすめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
高圧合成法に必要な試薬の量が想定よりも少なかったため、必要試薬の一部分を所属研究室所有の試薬にて代替し,相図の探索を優先させた.2024年度においては,メカノケミカル法などの合成法も取り入れ,研究を加速させるために必要な試薬や消耗品の購入が必要となる.
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