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2023 年度 実施状況報告書

銅(III)錯体の配位子場逆転に誘起される光化学・酸化還元挙動の解明と反応性への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23K19272
研究機関山陽小野田市立山口東京理科大学

研究代表者

竹山 知志  山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (10981996)

研究期間 (年度) 2023-08-31 – 2025-03-31
キーワード金属錯体 / 配位子場逆転 / 高原子価 / 電子状態 / 酸化還元反応
研究実績の概要

一般的な金属錯体では機能発現のカギを握るフロンティア軌道は、金属イオンのd軌道によって構成される一方、Cu(III)錯体では「Cuのd軌道」と「配位子のσ性軌道」のエネルギー準位の序列が反転する“配位子場逆転”が起こることで、フロンティア軌道が「Cuのd軌道」ではなく「配位子のσ性軌道」によって構成される。本研究では、Cu(III)錯体の光化学および酸化還元反応において「配位子のσ性軌道がどのように関与するのか」を理解し、この反応を利用して新奇な物性・反応性を創出することを目指している。
研究初年度である令和5年度は、Cu(III)錯体の合成から取り組んだ。既報のCu(III)錯体を8種類を合成したほか、2種類の新規Cu(III)錯体の合成にも成功した。新規合成した錯体については、単結晶X線構造解析により分子構造を明らかにした他、電気化学測定により酸化還元電位の決定も行った。
研究目的達成のために、合成した全てのCu(III)錯体の光化学的挙動を調査した。まず初めに、錯体を各種有機溶媒に溶解させ、溶液中における光化学的挙動を蛍光光度計を用いて調査した。その結果、検討した10種類のCu(III)錯体全てにおいて発光挙動は見られなかった。固体状態における発光挙動についても検討したが、いずれの錯体においても発光は観測されなかった。興味深いことに、配位子のみでは発光を示す分子であってもCu(III)イオンに配位により発光を示さなくなることが分かった。
一方で、Cu(III)錯体の酸化還元挙動についても調査した。一連の検討の中で、あるCu(III)錯体は、一電子酸化可能であり、形式酸化数としてCu(IV)種を生成可能であることが分かった。現在、各種分光法によりこの一電子酸化体の電子状態の解明に取り組んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既報のCu(III)錯体を8種類を合成し、光化学挙動および酸化還元挙動について調査を行った他、2種類の新規Cu(III)錯体の合成にも成功し、これらの錯体についても光化学、酸化還元挙動について調査した。当初の計画では、これらの検討を令和6年度の前半も行う予定であったが、既に当初の計画より半年ほど早く研究が進展している。
合成した全てのCu(III)錯体の光化学的挙動を調査した結果、いずれの錯体においても発光は観測されなかったが、興味深いことに配位子のみでは発光を示す分子であってもCu(III)イオンに配位により発光を示さなくなることが分かった。
Cu(III)錯体の酸化還元挙動については、あるCu(III)錯体において形式酸化数としてCu(IV)の錯体が生成可能であることが分かった。現在、この化学種の電子状態の解明を進めるとともに、生成したCu(IV)種の反応性開拓に取り組んでいる。これらの検討についても、当初の計画では令和6年度8月頃より検討を開始することを想定していたため、予定よりも早く検討が進んでいると判断する。
一方で、本研究課題申請時に期待していたCu(III)錯体の光化学的挙動については、今のところ有意な発光挙動を観測できていない。
以上のことを踏まえて、本研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。

今後の研究の推進方策

今年度は新規Cu(III)錯体の合成を進めるとともに、Cu(III)錯体を酸化することで生成する形式酸化数Cu(IV)種のキャラクタリゼーションと反応性開拓に注力する。新規Cu(III)錯体の合成では、八面体六配位構造を有するCu(III)錯体の合成に取り組む。既報のCu(III)錯体は平面4配位構造の錯体が大部分であり、これらの錯体と配位構造を異ならせることで新奇な光化学挙動や酸化還元挙動の発現が期待できるのではないかと考える。
Cu(III)錯体の酸化により生成する形式酸化数Cu(IV)種については、生成する化学種の実際の電子状態を明らかにすることから始める。具体的には、Cu(III)錯体を電気化学的に酸化することで形式酸化数Cu(IV)の錯体を生成させ、この化学種の吸収スペクトルやESRスペクトルを測定することで電子状態に関する情報を得る。実験的に得られた情報に加えて、量子化学計算による検討を組み合わせることで、実験と理論の双方から生成化学種のキャラクタりぜージョンを目指す。さらに、電気化学的に生成させた形式酸化数Cu(IV)の錯体と有機基質を反応させ、反応進行を追跡することで反応性解明にも取り組む。

次年度使用額が生じた理由

今年度購入予定の試薬が欠品中であったため、次年度に購入することを予定している。その試薬代に相当する額が差額として生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Diversity of oxidation state in copper complexes with phenolate ligands2024

    • 著者名/発表者名
      Takeyama Tomoyuki、Shimazaki Yuichi
    • 雑誌名

      Dalton Transactions

      巻: 53 ページ: 3911~3929

    • DOI

      10.1039/D3DT04230H

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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